第12章 あの日の夜に、心が還る
B組side
「……なんだあれ、付き合ってんのか?」
「いや、違うっぽい。けどあの自然さ……絶対ただのクラスメイトじゃねぇ」
「爆豪ってあんな顔で料理するんだな……。見てるこっちが緊張するんだけど」
遠巻きにキッチンを見つめながら、B組男子たちがざわざわしていた。
拳藤がうんうん頷きながら、「あのふたり、あれでお互い無自覚ってヤツかもね」と苦笑する隣で、鉄哲が「青春だなあ〜!!」と声を張る。
そしてちょっと遅れて様子をのぞきに来た回原が、ポカンと口を開けて、
「……え、もしかして俺らの入るスキない感じ……?」とぽつり。
その隣で、物間が鼻を鳴らした。
「フン、なにが“阿吽の呼吸”だよ。見ててむず痒くなる……ま、B組にはああいうタイプいないってことだねぇ。つまり平和ってこと!」
「でも物間、お前さっきからずっと見てるよな……」
「見てないよ!!見てないから!!」
必死に視線をそらす物間の耳が、ほんのり赤く染まっていた。
一方その頃、キッチンでは勝己が静かにルーを溶かし、主がふたり分の味見をしてこっそり微笑んでいた。
その背中に、またしても誰かの視線が集まっていたけど──
ふたりには、まだ気づく余裕もなかった。