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【ヒロアカ】re:Hero

第8章 優しい休日


カーテン越しに、やわらかな朝の光が差し込んでいた。

まどろみの中、まぶたをうっすら持ち上げると……
視界に最初に映ったのは、勝己の寝顔だった。

『……っ』

驚いて息を呑む。
昨夜のことが、静かに胸の奥で再生されていく。

ぬくもりも、距離も、夢じゃなかった。

私の隣で、勝己がぐっすり眠っている。
ほんの少し眉間にシワを寄せて、でもいつもよりずっと穏やかな顔。

なんだろう、
すごく、かわいい。

そっと身じろぎした拍子に、布団の中で指がふれる。
昨日、最後にそっと重ねたその手。

まだ、繋がったままだった。

(……やば……)

頬がじんわり熱くなる。
でも、離したくない。

そう思っていると、勝己がふいに目を開けた。

「……おはよ」

しゃがれた、寝起きの声。
けど、それが妙にあたたかくて。

『……おはよう』

ぎこちなく笑ったら、
勝己も、少しだけ目を細めて笑った。

「……昨日、なんもしてねぇのに、ドキドキして寝れなかったんだけど」

ぼそっと呟いたその言葉に、私は思わず吹き出した。

『なにそれ、ずるい』

「うっせ。そっちが“帰るの?”とか言うからだろ」

わざとむくれたふうな声。
でもちゃんと耳が赤いのは、誤魔化せてない。

『……じゃあ、今夜もそう言うかも』

そう囁くと、勝己は一瞬だけ固まって、
「……バカか」って言いながら、そっぽを向いた。

でもその耳の先まで、真っ赤だった。

カーテンの隙間から差し込む光が、
今日の始まりを知らせる。

だけど、この朝だけは――
いつもより、ほんの少しだけ長く、
ふたりの時間のままでいたいと思った。
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