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【ヒロアカ】re:Hero

第8章 優しい休日


ベッドの上で、二人の距離が少しだけ広がる。
勝己は名残惜しそうに、ほんの少しだけ離れていった。

『……帰るの?』

何気なく落ちたはずのその言葉が、自分の中にずんと響いた。

勝己は一瞬だけ静かになって、それからくっと身を起こす。

「……なんだよ、それ」

ちょっとだけ照れくさそうな目。
けど、どこか安心したような息。

「一緒に寝てぇのかよ」

言いながら私の顔をじっと見てくるから、息が詰まる。
真剣に、からかうでもなく。

『……あ、いや、その、そういう意味じゃ――』

言いかけて、自分がなにを言ったかやっと気づいた。
『あっ……あれっ、ちが、え、今のなし、ちがうの!!』

みるみる熱くなる頬、早口になっていく言い訳。
バタつく私の姿を見て、勝己がとうとう吹き出した。

「……ぷっ、なに焦ってんだよ」
そう言って、肩を震わせながら笑う。

「ほんっと、おまえさあ……」

そして次の瞬間には、また隣に戻ってきていた。

「……わかったよ。帰んねぇよ、もう」

そっと私の頭に手を伸ばして、髪をなでる。

「仕方ねぇから、隣で寝てやる」

その声はいつもより少し低くて、だけどとても優しい音だった。

私はそのまま布団を引き上げて、隣に身を沈める。

言葉はなくても、空気がすべてを伝えてくれる。

彼のぬくもりがすぐそこにあるだけで、
夜がこんなにも静かで、心地いいなんて知らなかった。

目を閉じる前、指先がそっと重なる。

そのまま、朝まで。
何もないけど、すべてがある時間だった。
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