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ラストラインを越えて

第33章 後年


神座が通路を歩いていると、キャッキャとはしゃぐ声とともに3人のウマ娘が慌てた様子で角を曲がっていくのが見える。
その足音は甲高く廊下に響き、「やばいやばいやばい!」と笑いながら逃げていった。
神座は小さく一度だけ瞬きをしてから彼女たちが消えた方向を一瞥する。
何も言わず、そのままトレーナー室の扉を開けた。
トレーナー室の窓から差し込んだ夕暮れが床を橙色に照らし、空中に舞う塵を浮かび上がらせている。
室内は何も変わってないように見えた。
……ただひとつ、デスクチェアがゆっくりと回っている。
先ほど駆けていったウマ娘のうちの誰かがぶつかったのか、それとも――。
神座は無言でそのままデスクへと向かう。
椅子を正面に戻し、静かに腰を下ろした。
提出用の書類に手をつけようとデスクの上のペンを取りかけ、しかしそのまま手を下ろす。
「…………」
中途半端に開いた引き出しの隙間で、金の箔模様が夕焼けの光を反射していた。定位置からズレた群青色の箱を見つめ、そっと押し込む。
しばらくの沈黙のあと、視線を伏せるように瞼をゆっくりと閉じた。









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