第29章 「善意の逆理 Ⅱ**」
唇を離して、僕はの頬に触れた。
その奥にいる愛しい彼女だけを見つけるように。
すると、ほんの一瞬の瞳にいつもの色が滲んだ気がした。
その奥で、何かが必死にこちらへ手を伸ばしているのを感じる。
『……愚かな子』
悠蓮が、微かに息を吐くように呟いた。
嘲るように歪んでいた唇が、ほんの少しだけ引き結ばれる。
「そう? は、僕に会いたがってるみたいだけど?」
翠色の瞳が、静かに僕を射抜く。
怒りよりも冷たい。
憎しみよりも深い。
まるで、僕の言葉など最初から届いていないみたいに。
『この子はいずれ、あらやへ還る』
「……あらや?」
そう言って、悠蓮はの奥へ深く沈んでいった。
翠色だけがまだ薄く瞳の底に残っている。
悠蓮が言ったことも気になるが、まずはが先だ。
「……。聞こえてるなら、僕の方を見て」
耳元に唇を寄せて、そう言うと。
「……んっ、あ……はぁ……」
潤んだ瞳がわずかに僕の方を向いた。
僕の声に、確かな反応を返し始めている。
「戻っておいで。僕のところに」
手首を掴んでいたのを離し、代わりに隙間を埋めるよう指を絡めた。
僕の声も、体温も、触れている場所。
僕の全部で、をこちら側へ繋ぎ止めるために。
彼女をきつく抱きしめたまま、再び腰を動かした。
「……ッ!! あ、ぁぁッ、や、ぁッ……!!」
激しく打ち付けるたびに、部屋に響く水音がどんどん大きくなっていく。
戻ってきている。
まだ完全じゃない。
なのに、目の前で僕に狂わされているの姿は、どうしようもなく僕の欲を煽ってくる。
「……っ、……っ」
「……っ、や、あ……っ、ぁ、あぁっ……!」
下腹部がじんじんと熱を持ちだした。
もう限界が近い。
「……っ、出る……っ!」
の中に、僕の欲ごとありったけの正のエネルギーを打ち込んでいく。
最後の一滴まで絞り出すように、中へ放ち続けた。