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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第26章 「愛ほど歪んだ呪いはない」


寮の開いた窓から吹き込む夜風が、少しだけ冷たく感じられた。
肌を撫でる空気に、ほんのりと秋の匂いが混ざっている。
あんなに騒がしかったセミの鳴き声も、いつの間にか静かになっていた。


シャワーから上がり、濡れた髪をタオルで拭きながら自分の部屋に戻る。
机の上に置かれた一冊の本に、自然と目が止まった。



『死の克服 ――再生医療の最前線』



熊本で、遺族の奥さんから預かってきた須和清仁の著書。
椅子に座り、しおりを挟んだままになっていたページを開く。


(……死は、生命の欠陥である。私たちはそれを克服しなければならない)


著者の須和さんは、病気や死を「エラー」だと定義して、それを再生医療で書き換えようとしている。
もし本当にそんな技術が完成したら、きっとたくさんの人が救われるんだろう。
大切な人を失う悲しみだって、この世からなくなるのかもしれない。


(でも……)


ページをめくる手が、ふと止まった。


死を克服する。
命の終わりを、なかったことにする。


すごいことのはずなのに。
どうしてこんなに冷たく感じるんだろう。


そっと本を閉じて、表紙のタイトルを指先でなぞった。


『花冠の魔導』は、苦しんでいる魂をあちら側へ送る力。
未練や悲しみを解き放って、命の終わりのその先へ還すためのもの。
死を受け入れて、次へ繋ぐこと。
それが、命の自然な流れなんだと思ってきた。


だから。
死を「欠陥」だと切り捨てるこの本の考え方が、どうしても自分の中にすんなりと入ってこない。


(……私には、まだ難しいな)


小さく息を吐いて、本を机の端に寄せた。


熊本の冷たい遺体安置所。
青白い肌から、肋骨を突き破るように咲いていた、一輪の白い花。


(あれは……)


思い出すだけで、両腕に粟が立つ。
死体を苗床にして咲く花。
まるで命の残骸を無理やりすするような、悍ましい花だった。


それから、『Re:bloom』の裏サイト。
そこに書かれていた一文が、頭の中で浮かび上がる。
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