第25章 「可惜夜に眠る 番外編」
「べ、ベッドって……。私、そんなに寝相悪くないですよ?」
恐る恐る聞き返すと、先生は私の顔をじっと見つめて。
また大きなため息をついた。
さっきよりも、ずっと呆れた顔をしている。
「……ほんっと、君って子は。あまりにも天然なひよこすぎて、僕、本気で心配になってきた」
「ひ、ひよこって――」
言い返そうとした瞬間、カチャッと再び金属音が響いて。
もう片方の手も手錠が掛けられ、私の両手は一つに繋がれてしまった。
完全に、身動きが取れない。
「わっ!?」
不意に、視界がぐるんと大きく反転した。
足がふわりと宙に浮いて。
気づいた時には、私は先生の肩に担ぎ上げられていた。
「ちょっと……っ! なにするんですか、下ろしてくださいっ」
手錠がはめられた両手で、先生の背中をぽかぽかと叩いた。
でも、大きな体はびくともしない。
「暴れないの。みんなのところに戻る前に。……その手錠の『いい使い道』、僕がたっぷり教えてあげるね」
「~~っ!!」
絶対、それ“いい使い道”なんかじゃない……っ!
これはまずいと思って、逃げようと身をよじった、その時――
今度はさわさわとお尻を際どいラインで撫で上げられた。
「ひゃっ……! ちょっ、どこ触ってるんですか……っ」
「の可愛いお尻。さ、行こっか」
ご機嫌な声と一緒に、先生はスキップで歩き出した。
一直線に向かっているのは、間違いなく先生のプライベートルームだ。
(だれか助けて……っ! おとーさん、おかーさーん!)
私の声なき叫びは、誰にも聞かれることなく。
波音に虚しく掻き消されていった。
――と、絶望した直後。
「……五条、何やってんるんだ」
プライベートルーム目前で硝子さんに遭遇し、私は無事救出された。
先生は手錠を没収されたうえ、「次やったら通報するぞ」と真顔で釘を刺されていた。
本気で悔しがる先生を横目に、私は手首をさすりながら、ほっと息を吐き出した。