第21章 「可惜夜に眠る 前編」
「も美味しいお肉、食べたいよねぇ?」
(えっ、私!?)
なんて答えれば……
でも、ここでの正解は一つしかない気がする。
「あ、……は、はい。食べたい……です」
私が恐る恐る頷くと、先生は「ほらね!」と勝ち誇った顔をした。
「制限時間は二時間! 終わらなかったら、今日の夕飯はカップ麺ね!」
その瞬間、野薔薇ちゃんの目が変わった。
「……やるわよ」
「えっ、釘崎?」
「二時間で終わらせて、高い肉食い尽くしてやるのよ!! さっさと動け虎杖!!」
「お、おう! 分かった! 伏黒も雑巾濡らしてこい!」
現金すぎる二人が猛ダッシュで散っていく。
パンダ先輩たちも「まあ、やるか〜」と苦笑しながら動き始めた。
その場に残されたのは、私と、やれやれと頭を抱える伏黒くんだけ。
「……結局、あの人の思い通りか」
伏黒くんがボソッと呟く。
私は苦笑いしかできなかった。
「恵も素直じゃないなぁ。心の中じゃ『皆でバーベキューも悪くない』って思ってるくせに」
先生が伏黒くんの肩を組んで茶化す。
伏黒くんは仏頂面のまま、先生の手を払いのけた。
「……掃除、してきます」
そう言って伏黒くんは、雑巾を持って歩き出した。
「んじゃ、頼んだよ~」
先生はひらひらと手を振って見送る。
ふと気づくと、玄関に残っているのは私と先生だけになっていた。
(……っ)
急にさっきバスの中で手を繋いでいた感触が、手のひらに蘇る。
一昨日のことも。
二人きりだと、途端に意識してしまう。
(なにかしなきゃ。動かなきゃ……!)
この沈黙に耐えきれなくて、
「わ、私も掃除行ってきます!!」
「え? あ、うん」
雑巾を掴んで、廊下を走った。
先生に見られてると思ったら、背中が熱い。
逃げるみたいにして、みんなのいる方へと急いだ。