第21章 「可惜夜に眠る 前編」
「おっはよ〜、みんな揃ってるねぇ」
「……!」
声がした先を見ると、いつもの黒の制服に目隠しの先生が小走りでこっちに向かってきていた。
伏黒くんがため息をついて言った。
「五条先生、遅刻ですよ」
「え〜? まだ集合時間“ちょい過ぎ”くらいじゃん」
先生は、へらっと悪びれずに笑う。
「ちょい過ぎの定義が壊れてます」
「さーて、小姑みたいな恵はほっといて――」
ぱん、と手を叩く音が空気を切った。
「夏休み恒例〜、五条悟プレゼンツ! 1・2年合同、夏合宿でーす!」
「うおー! やったー!」
虎杖くんだけが、ビーチボールまで掲げて全力で盛り上がっている。
その横で、野薔薇ちゃんがじとっとした目をしていた。
「……恒例?」
伏黒くんは何も言わずに肩をすくめるだけ。
そして、二年生たちも容赦なくツッコミを入れている。
「去年、そんなのあったか?」
真希さんが眉をひそめて問いかけ、「記憶にないな」とパンダ先輩が首を傾げる。
狗巻先輩は「しゃけ」と呟いて、頷いていた。
「まぁまぁ、細かいことは気にしない気にしない〜」
先生はひらひらと手を振ってから、人差し指を立てた。
「今回の合宿の目的はね〜、ズバリ!」
「夏を楽しむこと!」
(……え?)
予想してた答えと違いすぎて、ただ先生を見てしまう。
「訓練じゃないのかよ」
真希さんが腕を組み直し、完全に呆れ顔。
「もちろん訓練もあるよ? みんなには、僕選りすぐりの課題も用意してあるから」
「でもせっかくの夏休み、青春しなきゃ」
「恵なんて、任務がない日はクーラーの効いた部屋で本読んでるだけでしょ?」
伏黒くんのこめかみがぴくりと動いた。