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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第21章 「可惜夜に眠る 前編」


さすがに、はっきりとは覚えてないけど……
みんなでお花見に行って。
私は桜の花びらを必死に追いかけて。
お父さんとお母さんが、それを見て笑ってた。


この写真は、おばあちゃんからもらった。
あの家にあった写真は、全部流されてしまって。
だから……家族写真は、もう数えるくらいしかない。


指で、写真の二人の手にそっと触れる。
ほんの少しだけ、紙が波打ってる。
何度も何度も、触れた跡だった。


でも、二人の笑顔を直視できなくて。
その写真を裏返しにして、引き出しに押し込んだ。


目元が熱くなって、視界がにじむ。
背中を丸めて、その場にしゃがみ込んだ。

 
(……やっぱり、まだダメだ) 

 
夢の中で見た二人の笑顔が、目を閉じるたびに浮かんでくる。
あの声が、耳に残っている。


(……ごめんなさい)


零れた涙が、床に落ちた。


思い出す。
先生が言った、あの言葉。



『僕も、の両親に挨拶したい』

 

……だめだよ。
そんなの、無理だよ。
だって、見せられないよ。


私だけ笑って、ごはんを食べて。
先生と手をつないで、前に進んで。
そんな今を生きてる私を、ふたりは……どう見てるんだろう。


お父さんとお母さんが、怒ってる気がして。

 
(どうして、お前だけ生きてるの)

 
そんな声が、聞こえる気がして。


震災から少し経った後。
みんな、行方不明の人を探したり。
流されたものを拾いに行ったり。
瓦礫の間から、少しでも手がかりを見つけようとしてた。

 
でも、私は一度もあそこに近づかなかった。


(行けない、じゃなくて……行かなかった)
 

怖かった。
見つけてしまうのも。
見つけられないのも。
どっちも。

 
それに――

あの場所に行ったら、絶対に分かってしまう気がした。
自分が、どれだけ取り返しのつかないことをしたのか。


 
だって、私があんなことを言わなければ……

 

二人は今も、生きていたかもしれないんだから。
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