• テキストサイズ

【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第21章 「可惜夜に眠る 前編」


「ちゃーん! いっしょに行こー!」

 

玄関の方から、元気な声が聞こえてきた。



「あ、ミホちゃんだ!」

「ほらほら、慌てないの。転ぶわよ」



急いで廊下に出て、階段を上がった。

 

「ランドセル、ランドセル……!」

 

自分の部屋に飛び込んで、机の横にかけてあったランドセルをつかむ。

 

「ー! 忘れ物ないー?」

 

下から、お母さんの声。

 

「ないー!」

 

大きい声で返事をして、玄関へ行くと、お父さんとお母さんが待っていた。



「もー、ボタン外れてるじゃない」



お母さんがそう言って、私のコートのボタンを留めてくれる。



「よし。これで完璧」

「えへへ」



お父さんが、にっと笑った。



「じゃ、行ってらっしゃい。お姫さま」

「車に気をつけるのよー!」

 

玄関の扉を開けると、外の空気がすっと入ってきた。
冷たいのに、気持ちいい。
空が高くて、青くて――まぶしい。

 

「いってきまーす!」

 

そう言って、私は外に一歩出た。



「ミホちゃん、おはよ――」



言いかけて、足が止まる。


(……あれ?)


ミホちゃんがいない。
私は首をかしげて、もう一度まわりを見た。
道路も、電柱も、見慣れたいつもの景色のはずなのに。
鳥の声も、車の音も、風の音も、ぜんぶ消えたみたいだった。 
 


「ミホちゃん……先に行っちゃったのかな?」

 

私はお父さんとお母さんに聞いた。
でも、返事は返ってこない。



「ねえ、おかあさ――」



振り返ると、息が止まった。


お父さんとお母さんが、さっきと同じようにそこに立っている。
でも――
顔が、ぼやけていた。
輪郭が滲んで。
目も口も、もう見えない。


(なんか……へん)

 
目をこすっても、変わらない。

 
青い空も、さっきより白っぽい。
まぶしいはずなのに、色が抜けていくみたいで。
まるで、自分以外が、静かに薄れていくようだった。


お母さんの髪の色が、少しずつ薄くなる。
お父さんの服の黒も、白く滲んでいく。


(やだ……)
/ 730ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp