• テキストサイズ

【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第19章 「死に咲く花」



ズズ……ズ、ズズ……

 

まるで、何かが這い出してくるような、湿った音。
それは「根」が張るような、不快な音に聞こえた。

 

ふたりが部屋へ戻ったとき、
男の死体の胸元が、わずかに脈打つように盛り上がっていた。

 

「五条さん……」

 

五条は死体の前でしゃがみ込み、男のシャツをそっとめくる。

 

「……っ」

 

そこには、胸骨を内側から突き破るように――




白い花が咲いていた。

















♢  ♢  ♢



「――ってわけ」

 

先生が大福を食べながら、そう言った。

 

「また……花が……」

 

私は思わず息を呑んだ。



「その男が発送していた荷物ですが」

 

七海さんが淡々と続ける。

 

「中身は、例の《Re:bloom》の“裏サイト”で売られていたもので間違いないしょう。男のスマホの履歴やメールも確認しましたが、本当に、ただ言われた通りに動いていただけのようです」 

 

新田さんが口を開く。

 

「でも、五条さんたちの話からすると……今回のご主人以外にも、それを“手にしてる”人がいるってことっすよね?」

「いるだろうね」

 

先生が、最後の大福を口に入れながら呟く。

 

「問題は、それが何なのか。そして、どれだけの量あって、どこに流れてるかが不明ってこと」

「一番厄介なのは――」

 

一度だけ言葉を切り、ゆっくりと続けた。

 

「死んでからじゃないと、花が咲くかどうかはわからないってこと」

 

その一言に、背筋を冷たいものが這った。
本人すら気づかないまま、体内で潜み続ける呪い。
死によって、はじめて咲く花。

 
(じゃあ……)

 
今もこの世界のどこかで、花が咲いているのかもしれない。
今も誰かの“中”で、あの白い花が静かに息を潜めて育っているのだとしたら――

 
震えそうになる指を、膝の上できつく握りしめた。



「花が咲くまで何も……できないんですか……?」



自分の問いが、空気をさらに重くしたような気がして、思わず目を伏せる。

 
数秒の沈黙が落ちた。


やがて、七海さんがサングラスを中指で押し上げ、一つ息を吐いてから口を開いた。
/ 470ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp