第12章 「極蓮の魔女」
ぱたん、と襖が閉まる音がやけに静かに響いた。
部屋には、先生と私のふたりきり。
なんだか落ち着かなくて、きょろきょろと室内を見渡した。
ぴたりと並んだ布団。
あたたかな間接照明。
そして、そのすぐ傍には、わたしの旅行バッグ。
(本当に一緒に……寝るの!?)
混乱する思考の中、先生がふとこちらを振り返る。
「ん? どうかした?」
その笑顔は、いつもの調子で――
でも、どこかで“確信犯”的な悪戯っぽさを含んでいた。
(……ど、どうかしたに決まってるじゃないですか!!)
先生は、わたしの様子をじっと見ていたかと思うと――
ふいに、くすっと笑い出した。
「……こっちまで緊張してくるじゃん。顔、真っ赤だよ?」
「だ、だって、これは……っ」
うまく言葉が出てこない。
そりゃ、もしかしたら……なんて思ったりもしたけど。
まさか、今日その日を迎えるなんて……。
どうしよう、全然準備できてないよ。
「大丈夫だよ、。無理させるつもりはない」
「嫌がることも、絶対にしない。……いや、たぶん。できるだけ努力はする」
「……え、どっち!?」
慌てるわたしを見て、先生はふっと微笑んだ。
そして、わたしの頬を指の腹で撫でる。
「でも――」
一拍おいて、目の奥に冗談では済まない光が揺れた。
「僕が、常にに触れたいって思ってることは……ちゃんと覚えてて?」
その言葉が、胸の奥に落ちた瞬間――
熱いものがこみ上げてきて、呼吸が止まりそうになる。
視線を逸らすこともできず、ただ呆然と先生を見つめていた。
(そんなの……そんなの……)
(意識するなってほうが無理だよぉ……)
心臓はもう、とっくに制御不能だった。
うるさいくらいにドキドキしてる。
「疲れたでしょ? お風呂入ってきなよ」
そう言って、先生はいつものようにやさしく私の髪を撫でた。