第12章 「極蓮の魔女」
「……私、知りたいです」
自然と言葉が溢れていく。
「悠蓮が……何をしたのか。魔女だと呼ばれた理由も。全部、ちゃんと……」
そう言ったわたしを、先生はじっと見つめていた。
青く、深く、どこまでも透き通った六眼が、夜の灯りを映して微かに揺れた。
それは、全てを見透かすようでいて。
どこか人間離れした美しさを湛えていて。
思わず、呼吸するのを忘れてしまいそうになる。
「……真実っていうのは、時に呪いにもなる。知ればもう、戻れないよ?」
その声は、いつもの軽薄さを帯びていたのに――
どこかで底知れない何かが、静かに滲んでいた。
まっすぐに先生の目を見つめて、ひとつ静かに息を吸った。
「……覚悟なら……とっくにできています」
先生は口元をわずかに歪めて、ニヤリと笑った。
「……いい顔してる」
そして、ふっと目元を細めて、言葉を続ける。
「僕も一緒に確かめるよ。……現・五条家当主として。そして、君の恋人として」
その声が、心の奥の深い場所に静かに降りてくる。
(先生……)
先生から視線を逸らして、川の方を見やった。
夜の鴨川。
灯りが滲む水面は、
静かに流れながらも、どこか底知れぬ暗さを湛えている。
目に映るのが澱んだ闇だったとしても。
悠蓮という名が、なぜ歴史の闇に葬られたのか。
“魔女”と呼ばれたその人が、何を抱え、誰と繋がっていたのか。
そして、五条家はそのとき……何を知り、何を隠したのか。
まだ知らない真実が、わたしたちを待っている。
(……たとえ、真実がどれほど暗くても)
わたしは――もう目を逸らしたくない。