第13章 副隊長、私はもう要りませんか?
手の温かさに目を覚ますと、独特な匂いが鼻を掠めた。
病院の匂いだ。
手が温かいのはなんだろうと目線を下に向ける。
左手を宗四郎に握られていて、右手は母に握られていた。
2人共寝てる。
あぁ、私生きてたんだ…。
というかなんで宗四郎がいるの?
そういえば、夢の中でずっと宗四郎に話しかけられていたな。
あんなことをされても彼を求める自分を嘲笑った。
「……お…お母さん…。」
右手に力を込めるとすぐに母は顔を上げて私を見る。
「凉!!よかった!よかった…宗四郎くんのおかげね…。」
宗四郎?
なんで彼なのだろうか。
母の声で目を覚ました宗四郎が顔を上げる。
え、お母さんよりも目腫れてない?真っ赤だよ?
宗四郎の頬が濡れていく。
好きだった相手だから、そんな風に泣いてくれるの?
もう気持ちはないくせに。
「凉、ほんまにごめん…許されへんのはわかっとる。でも、死ぬんはやめてくれや…。」
なんで謝るの?
私が死のうとしたから?
気持ちを取り戻したくてこんなことをしたんじゃない、憐れんで欲しくてしたんじゃない。
私のものが手から離れていくのなら、生きる意味はないと思った。
ただ、それだけ。