第20章 気付いた恋心
理世も悟浄もそれぞれが互いに恋心が自身の中で確立した今、同じ部屋でと言っても悟浄が帰ってくるのは夜中となることが多くなる。
「…ハァ…」
空いているベッドを見ながらももぐりこみ、そのまま眠りにつく理世。そうして二日後、この町も出ることになった。
「…・・・・」
「なぁんか、後ろが静かですねぇ…」
「知らん」
「そうなんですか?」
「・・フン…」
知っている三蔵の中では正直どうでもいいと思いながらもちらりとバックミラー越しに理世と悟浄の様子を垣間見る。
「…気に、なりますか?」
「ならん」
「……そうですか」
そんな時、妖怪が相変わらず襲ってくる。
「…てめぇはここに居ろ」
「…ぁあ?」
しかし悟浄はジープから降りようとした。
「…てめぇはここに居ろと言ったはずだが?」
そうしてジャカっと悟浄の額に銃口を突き付ける三蔵。そのままスイっと上にあげればくるりと踵を返す。
「…なんなんだよ…」
「…いっていいよ?」
「死にたかねぇよ」
「……そか」
「あの様子じゃここから降りたらマジで殺しかねねぇっつぅの。」
そう話しながらも二人の視線は重なることはなかった。
「……ハァ…」
「ため息つかなくてもいいじゃねぇの」
「…別に?」
「悪かったな、三蔵じゃなくて…」
「え?何が?」
「だって、ほら、いつも三蔵だろうが、この役目…」
「あ、言われてみれば」
「だろ…?」
「だからって別に三蔵がいいとか…そういうんじゃないし…」
「…気ぃ使わなくてもいい」
そう続ける悟浄。ちらりと理世を見れば戦っている三人に向いていた。
「…やっぱな」
「何か言った?」
「いんや?」
そうして何をするでもないままに二人はただその争いが終わるのを待っていた。