第38章 いつも笑顔のあの人は…✿保科宗四郎✿
あの人は笑わない。誰といても笑顔のあの人は、私の前では笑わない。
まるで頬が上がっているのがデフォルトのような彼は、あの亜白隊長と2人きりですら笑っている。
「あ、三浦〜。これ、片しといて」
「了」
こういう何気ない会話でも、この人は笑っている。相手が私じゃなければ。
疑問とよくわからない寂しさを覚えながら、ジッと見つめていた。いつも糸のように細い目が伏せて、もっと細くなっている。
――笑って欲しい。
私のことが嫌いだから笑わないのだろう。嫌われるようなことをした覚えはないが、私の存在自体が気に障るのであれば、仕方がない。
「なんや。どしたん?」
「あ……いえ」
会釈をして離れていく。
うんともすんとも言わない頬が寂しく、気になってしまう。ただそれだけ……それだけのはずだったのに。
――嫌わないで……"好き"って言って。
背中に視線を感じながら、受け取ったファイルを持って資料室に向かった。