第14章 塞ぎ込む悪役令嬢(天翔る悪役令嬢前日譚)
「美味そうだ」
「美味しいですわよ」
ふふっと私達は笑い合う。
今日はオフではなかったが、『感情回路』について話して来いと休みにされてしまった。
と、言っても何を話したら良いのやら。
婚約者のグスタフ様にする様な四方山話をしても―――と、私はサンドウィッチを齧る。
トマト、ハム、チーズとキュウリ、マスタードバター、パン。
どれも末席とはいえ爵位を持っている私だから口に出来る様な物だ。
一番底辺で暮らしている民は生物すら口に出来ないと聞く。
もっと豊かになる為には人類は生きなければいけない。
それにはいつ来るとも予測できないソラバミを倒さなければいけないの、だろう。
手が赤く染まっていた。
私は無意識にサンドウィッチを強く握り締めている。
「エレーン子爵令嬢……?」
ハンケチを出して手を拭う。
「ハネル卿、何でもありませんわ」
手は綺麗になったのに、―――まだ何だか……。