第2章 人形の家
「光は暗闇のなかで輝いている 暗闇は光を理解しなかったーー」
そしてジョンの祈祷を終わったのと同時に、ミニーの額から十字架が落ちた。
額は十字架の跡で焼けていた。
「……霊はおちたと思います。けど滅ぼしたわけとちがいます。二度と悪用されへんように焼いてしまうのがええと思います」
ミニーは次こそは呆気なく簡単に燃えた。
「ミニーの正体はこの家についてる地縛霊やと思います。地縛霊になるほど強い因縁をもってる霊ゆうたら、この家で死んだ子どもとちがいますか?」
「だろうな。一人がさびしくてこの家にきた子どもを友達としてつれていこうとしてるってわけだ。そしてその子どもたちも地縛霊になって……か」
「……なぜ、子どもだけなんだ?」
不意に、ナルが疑問を抱いているように呟いた。
「ああ?」
「さびしいのならつれていく相手は子供でなくてもいいはずだ。母親がわりになってくれそうな……典子さんや麻衣や結衣でもいいはずだろう。むしろミニーは彼女たちを排除しようとしていた」
「あ、そっか」
「そう言われると、なんで子どもだけなんだろうね……」
寂しいならナルの言う通り、母親代わりとか父親代わりの人をつれていってもおかしくないはず。
だけどそれを排除しようとしているのだから、とても不思議である。
「……麻衣、原さんのようすは?」
「まだ気分悪いみたい」
「そうか……。浄霊をやってみよう、ぼーさん」
「おれ?」
ナルはファイルから1枚の紙を取り出した。
「最初に死んだ子は立花ゆき。これが生没年と戒名だ。宗派は浄土宗」
「……よく調べたな、70年近くまえのことを」
「かんたんなことだ」
ナルはさも当たり前のように言うが、あたし達にとっては簡単なことでは無い。
(すごいな……)
そして、典子さんと礼美ちゃんはホテルに移る事になった。
そのほうが安全だとナルが判断したからである。
「ほんとに、ホテルに移ったぐらいでだいじょうぶでしょうか」
「この家にいるよりはマシでしょう。護符と……ねんのため松崎さんとブラウンさん、原さんをいっしょにいかせます」
「結衣ちゃんと麻衣ちゃんはいかないの?」
「うん……ごめんね」
「でも、頼りになる人達がいるから」