第2章 人形の家
「……子どもの声……どすな。えらいたくさん……何人いてるんや……」
たくさんの泣き叫ぶような子供たちの声。
それがずっと続いているのだ、まるで何かを探しているかのように。
「何か探してる……?もしかして礼美ちゃん?」
「うん……礼美ちゃんをさがしてるみたい……」
「ジョンのしたことが効果あったか……とすると、結界が役にたつかもな」
「結界?」
「オマジナイで悪い霊が入れないようにしてやるのさ」
ぼーさんの説明を受けていた時であった。
子供たちの声がプツリと突然途絶えてしまったのである。
「声が、途絶えた……」
「……ど、どうしたのかな」
何故、声が途絶えたのだろうか。
何か嫌な感じがするな……と思っていると、綾子の叫び声が聞こえてきた。
「ナル、ナルッ!!ミニーが礼美ちゃんのところにきたわよ!」
叫び声と共に、綾子がシーツに丸めた何かを持ってベースに飛び込んできた。
「なに?」
「このなかにいるわ。礼美ちゃんのふとんの足元がふくらんでるのに気がついて、めくってみたらいたのよ……!」
ナルがシーツを広げると、そこには姿を消していたミニーの姿があった。
「礼美ちゃんは無事ですか」
「……ええ」
何故、子供たちの声が途切れたのか理由がはっきりした。
あの声はやっぱり礼美ちゃんを探していて、その探していた礼美ちゃんを見つけたから声が消えたのだ。
「ジョン、落とせるか?」
「やってみるどす」
夜明け近くになった頃、ジョンがミニーを除霊する事になった。
あたし達はそれを傍で見守ることになったが、ミニーがとても不気味で仕方ない。
「天にましますわれらの父よ。ねがわくは 神 われらをあわれみ、われらをさきやいて その御顔をわれらの上に 照らしたまわんことを……」
ジョンがミニーの額に十字架を乗せると、閉じていたミニーの瞳が勢いよく開いた。
「いっ……!」
「やだっ」
「うっ」
思わず麻衣と二人でぼーさんの服を掴む。
「……初めに言があった 言は神であった。この言は初めに神とともにあった」
ジョンが祈祷の言葉を口にする度、ミニーが音を鳴らしながら揺れていた。
同時に額からは小さな煙があがっている。