第2章 人形の家
「……子どもの霊がいたるところにいますわ。みんな、とても苦しんで……お母さんのところに帰りたいといって泣いています。それに……この家、霊をあつめていますわ。ぜんぶ子どもの霊です……」
それだけを告げると、ふらりと真砂子の身体が傾く。
あわててあたしと麻衣がそれを支えているが、真砂子の顔色は先程以上に悪くなっていた。
「真砂子!」
「ど、どうしよう。取り敢えず寝かせた方がいいよね……!」
真砂子をベースにあるソファに寝かした。
顔色が良くなるまで真砂子には休んで貰うことになり、ジョンは礼美ちゃんに祈祷をしに向かい、ナルも同行した。
「次こそ、ミニーから霊が居なくなるといいんだけど」
「だな。まさか燃えねぇとは思わなかったわ」
「ぼーさん、除霊失敗しちゃったねぇ」
ニヤリと笑うと、ぼーさんは眉を寄せてからあたしの額へとデコピンをした。
「いったああ!?」
「生意気言いやがって」
「だからってデコピンはしなくても……って、あれ?」
あたしは目を丸くした。
「どうした、結衣」
「ぼーさん、ミニーが……ミニーがいない!」
先程までそこに座っていたはずのミニーが居なくなっていた。
それを伝えると、血相を変えたぼーさんがナルの元へと走っていく。
「いつの間に……」
「逃げたわね」
「え?」
「ジョンに祈祷されるとたぶん、わかったのよ。だから逃げたのよ、ミニーは」
ベースに戻ってきたナルは『じきに現れる』と言った。
深夜二時を過ぎたぐらいの頃、あたし達はベースにいた。
モニターを見ながら様子を見ているが、綾子は礼美ちゃんの元にいる。
もしの為にというのだが、やはり不安である。
そしてベースは静寂に包まれている。
深夜の為、眠くなっているせいなのか言葉が出ない。
ただ時計の音だけが鳴っている……と思った時であった。
ドン!!
まるで叩くような強い音が響いた。
「ナル!マイクにも音が入ってるよ」
「切り替えろ」
ポルターガイストの音が強く響いている中で、他になにか違う音が紛れていた。
「なんの音……これ……」
何か『アー』という音が聞こえる。
だが徐々にそれが音では無いということに気が付いた。
「声……」
聞こえてきたのはたくさんの声だった。