第2章 人形の家
「手がとれないの!」
礼美ちゃんの腕を掴んで引っ張ってみるが、その手は草むらから取れることはない。
まるで誰かが掴んでいるかのようだ。
「ちょっとまっててね!」
「大丈夫だからね、礼美ちゃん!」
麻衣と共に草を千切りながら、礼美ちゃんの手を掴んで引っ張ると、次はすんなりと取れた。
だがそこにはだれもいない。
(なんで?)
確かに、誰かが礼美ちゃんの手を掴んでいるようだった。
なのにそこには誰もいない。
「わああ……ん!」
「礼美ちゃん!」
「まって、礼美ちゃん!」
礼美ちゃんは恐怖からなのか、泣き出したかと思うと何処かへと走っていってしまう。
追いかけようとした時、慌てたように典子さんが叫んだ。
「結衣ちゃん、麻衣ちゃんとめて!そっちには池があるの!」
その言葉を聞いて、あたし達は慌てて礼美ちゃんを追い掛ける。
典子さんの言う通り、彼女が走って行った先には大きな池があり、礼美ちゃんは何かから逃げるように走っていた。
「ミニー!ごめんなさい!」
礼美ちゃんの言葉に、目を見開かせる。
「ごめんなさい、おこらないで!いじわるしないで!ごめんなさ……」
礼美ちゃんは謝りながら池へと落ちた。
「「礼美ちゃん!」」
慌ててあたし達は池へと飛び込んだ。
あたし達の肩まで浸かる程の深さの池にゾッとしながら、辺りを見渡す。
「礼美ちゃん!礼美ちゃん、どこ!?」
「礼美ちゃん、どこ!?」
泳ぎながら礼美ちゃんを探す。
こんな深さ、礼美ちゃんはパニックを起こしているから溺れてしまうはず。
危険だ。
そう思いながら辺りを探していれば、礼美ちゃんが苦しげに顔を池から出していた。
「礼美ちゃん!」
「落ち着いて、礼美ちゃん!直ぐに池から出るからね!」
礼美ちゃんを抱えると、あたし達は直ぐに池から出た。
「礼美!礼美……礼美、よかった……!」
「おねえちゃーん!」
恐怖のせいで泣き出した礼美ちゃんを典子さんが抱き締める。
それを見ながらあたしは背筋が凍る思いをした。
(これがミニーの報復ってこと?悪い子にバツを与えるってことなの?)
恐ろしい。
そう思いながら、あたしは震える腕を抑えた。