第2章 人形の家
わるいこには
ばつをあたえる
大人でも手が届かない壁にそう書かれていた。
「な……に、これ……。悪い子……って、まさか……礼美ちゃん……?」
「……礼美ちゃんは話してはいけないと言われたことを話してしまった。ミニーは礼美ちゃんが裏切ったと思っている。結衣、麻衣。礼美ちゃんの傍から離れるな」
翌朝。
あたし達は典子さんと礼美ちゃんと共に庭先にいた。
礼美ちゃんは元気よく庭で遊んでいて、それをあたし達はベランダに座って眺める。
「いま、ナル達があのラクガキ消してますから」
それを見せない為にもと、礼美ちゃんを庭に連れ出したのだが、言い出しっぺはなんとナル。
少しは優しいところもあるようだと思ったが、たぶん優しさでは無いような気がする。
一方、ぼーさんは今違う場所でミニーを燃やしているはず。
除霊したけれど、また人形に霊が入り込ませない為らしい。
「ありがとう……ごめんなさいね」
「そんな!典子さんが謝る必要なんてないですよ」
「そうですよ。ケガしたうえに香奈さんまで出てちゃって……」
今朝、香奈さんは置き手紙を残して出ていってしまっていた。
『こんな気味の悪い家にはいられない』
それだけを残して、何処にいるのかも分からない。
「しかたないわよ」
典子さんはそう言って微笑んだ。
気丈に見せているけれど、本当は不安だったり怖かったりするはず。
そんな彼女の元に、礼美ちゃんがやってきた。
「おねえちゃん。あし、いたい?」
「ヘイキ。礼美が仲よくしてくれたら、痛いのどっかいっちゃった」
礼美ちゃんは当初と打って変わって、とても明るくて人懐っこい子になっていた。
やはりミニーのせいだったようで、今はとても笑顔が増えている。
「礼美、おはなつんできてあげるね。結衣ちゃん、麻衣ちゃん、いこ!」
「おうーっし!」
「たくさんとろーう!」
庭先には色んなお花が咲いている。
どれも綺麗で彩りも素敵だ。
「どれにしよっか!」
「いちばんきれいなの!」
「オーケー!」
3人で色んなお花をつんでいく。
礼美ちゃんは楽しげにしていて、それを見ていてホッとしたのも束の間。
「やっ!」
礼美ちゃんが小さく悲鳴をあげた。
「礼美ちゃん!?」
「どうしたの!?」