第2章 人形の家
「どー思うよ、ナルちゃん」
ぼーさんの質問にナルは答えない。
何か考えているようで、こちらの話が聞こえいない様子。
もしかしたら聞こえているけれど、あえて無視しているのかもしれない。
「あ、そーだ!ミニーに霊が憑いててミニーのフリしてるってのは?」
「……そのセンかもしれないな。落としてみるか、ぼーさん?」
「おうともさ」
その後、ぼーさんは用意していた袈裟を身にまとってから礼美ちゃんの部屋でミニーに憑いているかもしれない霊を落とすためにお経を唱え始めた。
それをあたし達はベースで見守る。
「ーーーナウマク サンマンダ バザラダン。センダマカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カン マン」
ぼーさんが除霊している間、礼美ちゃんの方に霊がいかないようにと綾子がそばにいる。
だがイマイチ不安であり、大丈夫だろうかと考えてしまう。
(除霊、成功するかなあ……)
なんて思いながら画面を眺めていた時、外から悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあああ!」
「典子さんの声!?」
慌ててベースから飛び出すと、廊下に典子さんが倒れていた。
「……典子さん!?どうしたの?」
「……あ……足……」
同じように悲鳴を聞いて駆けつけたぼーさんが、足を見てみると顔つきが険しくなった。
「足首……脱臼してるぞ」
「……だれかが、すごいいきおいで足をひっぱったの……」
彼女の足首を見て、あたしは目を見開かせた。
典子さんの足首には子供の手の跡がくっきりとついていたのだから。
救急車が呼ばれて典子さんは運ばれた。
その間にと、ナルは礼美ちゃんにミニーについて聞くことにした。
流石にナルだけだと不安なので、あたしと麻衣も付き合うことに。
「礼美ちゃん。なにがあったんだい?ミニーがやったのかな?」
「ミニーはどこ!?」
「ミニーはぼくがあずかってる」
「かえして!」
「ミニーはいつからしゃべるようになった?」
「かえして!礼美のおともだちなんだから……」
威勢よく叫んだ礼美ちゃんだが、ナルの底冷えするかのような瞳にびくりと身体を震わせた。
「礼美ちゃん。典子さんはケガをした。ミニーがやったんだ、そうだろう?みんながこまってるんだ、それでもいいのかい?」
ナルの責めるような言葉に、徐々に礼美ちゃんの目が潤んでいく。