第2章 人形の家
部屋に辿り着き、あたしがノックをしようと手を扉に近づけた時であった。
「家の中は悪いマジョだらけよ」
部屋の中から、礼美ちゃんでもない典子さんでもない聞いた事のない声が聞こえてきた。
咄嗟に麻衣と顔を見合せてから、声がよく聞こえるようにと扉に耳を近づける。
「だいじょうぶ。みーんな、おいだしてあげる」
「おねえちゃんも、結衣ちゃんと麻衣ちゃんも?」
「もちろん」
「礼美、おねえちゃんはいたほうがいい」
「だめだめ。おねえちゃんはマジョのテサキなんだよ。だいじょうぶ。ちゃーんとシマツしてあげるから。そのかわり、あたしのいうこときかなきゃだめだよ」
その言葉を聞いたあたし達はすぐに扉を開けた。
「礼美ちゃん!?」
麻衣が叫んで入ると、中にはキョトンとした礼美ちゃんが床に座っていた。
彼女の目の前には座らされたミニーもいる。
「いま、だれかとお話ししてなかった!?」
「だれとお話してたの!?」
「……ミニー」
「ミニーだけ!?」
「べつのこもいるよ」
そう言って礼美ちゃんはとある方向を指さした。
「あれ……いっちゃった」
彼女が指さした先には誰もいない。
だが、礼美ちゃんには恐らく何かが見えていたのだろう。
その事実に背筋が凍りつくような感じがした。
「い、行っちゃったのか〜。あたし達が入ってきたからなのかな?」
「きらわれちゃったかなあ。学校のお友達?」
「ううん」
「学校のお友達じゃないの?」
「うん、違うよ」
またもや、あたし達は顔を見合せた。
「そのお友達、いつから遊びにくるようになったの?」
「わかんない」
「……ミニーは、ミニーはそのお友達と仲良し?」
あたしの問に、礼美ちゃんは少し首を捻る。
何処か悩んでいるかのような表情だが、少ししてから口を開いた。
「ミニーがつれてきたの」
あたし達は直ぐにベースに戻って、先程の事をナル達に伝えた。
その話を聞いた綾子やぼーさんは嫌そうに顔を顰めてしまう。
「この家なんなのよ!もしかしてあれ?近所でも有名なオバケ屋敷ってやつ?」
「っつーより、ミニーになんかあんじゃねえのか?その見えない友だちをつれてきたのはミニーだっていったんだろ?」
「うん」
「礼美ちゃん、そう言ってたよ」