第2章 人形の家
「おっ、これがミニーか。よくチビちゃんが貸してくれたな」
「礼美ちゃんがねちゃってからなんとかねー」
「昼間に貸してもらえるか聞いたけどダメだったんだよねぇ」
だから、礼美ちゃんには申し訳ないけれど寝ている隙に典子さんに頼んで貸してもらったのだ。
「……人形って気味悪いね」
「夜に見ると特にねぇ……」
「まーな。人形ってのはもともと人の魂を封じ込める器だからなあ。魂がなくて中がカラッポだから霊が憑依しやすいんだよ」
「「げー」」
麻衣と揃って声を出した時、ナルが椅子から勢いよく立ち上がった。
「ナル?どうし……ミニー!?」
いつの間にかモニターの向こう側のミニーがベッドの上でうつ伏せで倒れていた。
さっきまではちゃんと座っていたというのに。
「……うそ、さっきまですわって……」
そこで麻衣が言葉を止めた。
何せミニーの体がまるで下に引っ張られているかのように、動いていたから。
そして何故か首までが取れていて、その首が表を向いた。
「っ……」
首がベッドから落ちる。
その落ちた反動なのか、ゆっくりと首は転がっていき動きを止めた。
「だめです。なにも記録されていません」
「測定機器もぜんぶエラーだ」
あのあと、カメラを巻き戻して見ようとしたがカメラはなにも記録していなかったのだ。
礼美ちゃんの部屋に設置していた機器も全てエラー。
気味が悪い。
そう思っていると、礼美ちゃんの部屋のミニーを確認しに行ったぼーさんが帰ってきた。
「ぼーさん!どうだった?」
「ミニー、どうなってた?」
「……なんともなかった。ミニーの首取れてなかったぜ。最初に見たまんま、すわってやがった」
気味が悪い現象を見たその翌日。
あたしと麻衣は礼美ちゃんに会うため、典子さんの部屋へと向かっていた。
「ナルのさ、あの言葉……なんか嫌だよねぇ」
「わかる」
昨夜のナルは、あの現象と機器のエラーについてこう語っていた。
『ーーこんなのよくあることだ。霊は機械と相性が悪い』
よくあってたまるか。
そう思いながら階段を上がっていく。
「ま、そんなことどーでもいいよ。でも、礼美ちゃんはミニーと一緒にいちゃいけない気がする」
「それは同感。あんな怖い人形とはいないほうがいいよ」