第2章 人形の家
何故か部屋にナルの姿があった。
だがそのナルは普段とは想像もつかない優しい笑顔を浮かべているのだ。
「ど、どうしたの?」
驚いた麻衣が声をかける。
するとナルがゆっくりと口を動かしていく。
声は聞こえないが、なんとなく何と言っているのかがわかった。
アヤミチャンガ キケン
「礼美ちゃんが危険?」
あたしと麻衣は顔を見合わせた。
(礼美ちゃんが危険ってどういうこと?)
「それ、それどういうこと?」
「ナル、礼美ちゃんが危険ってどういうこと!?」
あたしと麻衣がそれぞれ尋ねるけれども、ナルは答えない。
真剣な表情のままで、あたし達を見ているだけ。
「ねえ、ナル!なにが危険なの?なにがおこってるの!?ナル!」
最後の麻衣の叫びであたしは目が覚めた。
数回瞬きをしてから辺りを見渡してから起き上がれば、同じように麻衣も起き上がっていた。
「……ナルの夢、見た?」
あたしがそう聞いてみると、麻衣は小さく頷いてから顔を徐々に真っ赤にしていく。
一方あたしは頭を抱えてから唸る。
(何故、またナルの夢!?好きでも無い人の夢を見るってどういうことなの!?しかも麻衣とたぶん同じ夢見てるよね!?)
真っ赤にさせる麻衣と唸るあたし。
こんな所を誰かに見られたら変な目で見られるのは一目瞭然。
「ていうか、なんで麻衣と同じ夢を見るんだろう…」
「た、たしかに……というか、こ、こんなときに……」
「……と、とりあえず、礼美ちゃんのことナルに言ってみる?」
「そ、そうだね……」
「……その前に、その真っ赤な顔どうにかしたら?それナルに見せられる?」
「見せられないよ!!」
叫んだ麻衣は顔を両手で仰ぎながら、なんとか赤面から元の顔に戻そうとしていた。
そんな妹を見ながら、あたしは夢のことで悩む。
(どうせなら、ぼーさんの夢がみたいのに……)
好きでも無い相手が出てきて、尚且つ双子の妹と同じ内容の夢を見る。
なぜそんな不思議なことが起きているのだろうかと、悩んでしまうが自分の頭でそれが分かるわけがない。
だからといって、誰かに相談出来る内容では無い。
「よし!どう、結衣!元に戻ってる!?」
「戻ってる。じゃあ、とりあえずナルの所に礼美ちゃんのことを話に行こうか」