第2章 人形の家
「ちょっとまえまではもっと明るくて、人懐っこかったのよ。兄が再婚してこの家に来た頃からこうなのよ」
「ふうん……」
「そうなんですね……」
何かあったのだろうか。
昨夜の事と言い、礼美ちゃんとこの家の何かが関係しているのかなと思いながらも、礼美ちゃんを見る。
今も大人しく一人でミニーと遊んでいる礼美ちゃん。
だけど、その表情はどこからとても暗く感じてしまう。
そう思っていると、部屋の扉がノックされて香奈さんが入ってきた。
「礼美ちゃん、おやつよ」
お茶とコップにクッキーが置かれたトレーを持った香奈さんは、礼美ちゃんの傍に座った。
「遊んでもらってよかったわね。なにしてたの?」
優しい声色で尋ねる香奈さんだが、礼美ちゃんは返事をしない。
それどころか香奈さんの方を見ないで俯いているだけ。
「ちゃんとお返事してほしいな。ほら、クッキーよ」
香奈さんがクッキーのお皿を見せる。
だが礼美ちゃんはそっぽを向いてしまった。
「なに?ほしくないの?」
小さく礼美ちゃんが頷くと、香奈さんの表情が険しくなった。
「そう。かってにしなさい!」
怒りを顕にした香奈さんは、勢いよく立ち上がってからそのまま扉を閉めて出ていってしまった。
あたし達と典子さんは顔を見合せてから礼美ちゃんを見る。
「礼美ったら。おねえちゃんが食べちゃうから……」
「だめっ!どくがはいってるの!」
まさかの言葉にあたし達は目を丸くした。
「ど、どく?」
「ミニーが教えてくれたの。おやつにどくがはいってるって。あのひとはわるいマジョだって。まほうでおとうさんをケライにしたの。礼美とおねえちゃんがジャマだからころそうとしてるの!!」
あたしはミニーを見た。
ミニーというと、礼美ちゃんがずっと抱えているお人形のこと。
そのお人形が教えてくれたということはどういうことなのだろうか……。
その後、あたしたちは仮眠することになった。
ずっと徹夜だったのもあるし、ナルからも許可がおりたので麻衣と共に典子さんが用意してくれた客室で休んでいた。
(なんだか、ふわふわする……)
意識が覚醒していき、重たい瞼を開ける。
隣を見ると麻衣も起きていたようで、伸びをしていたので『おはよう』と声をかけようとした時である。
「な、ナル!?」