第10章 悪夢の棲む家
とりあえず……と双子は頭を軽く下げる。
それに気が付いた覗いていた女性は勢いよくカーテンを閉めた。
「あれが例の笹倉さんかなー」
「じゃないかな」
玄関の扉を閉めた結衣はふと廊下に視線を向けて、違和感を感じた。
(……あれ?ナルと麻衣と翠さんたちいない?何処に行ったの……)
なんで誰もいないの。
「──谷山さんたち?」
翠に声をかけられて結衣は肩を跳ねさせた。
目の前には不思議そうにしている翠、そして無表情のナルと隣には麻衣がいる。
「すみません、ちょっとぼーっとしちゃって」
「すみません!あ」
廊下に中年の女性が立っている。
彼女が翠の母なのだろうと結衣は頭を下げ、隣にいた麻衣も頭を下げた。
「こんにちは」
「おじゃまします」
母親は虚ろは目をしている。
そして無表情のまま頭を下げてきた。
「こちらです。どうぞ」
母親は結衣達が通り過ぎても頭を玄関へと向けて下げていた。
それを見て双子は顔を見合わせてから、翠に着いていく。
「調査の拠点用に部屋が必要との事でしたが、ここで大丈夫ですか?」
翠が案内したのは少し狭めの和室だった。
「ありがとうございます。機材用の電源は」
「電力会社に連絡して、家のものとは別にに確保してもらいました。お休みになる部屋は──」
「ここで結構です」
「え?でも……」
「大丈夫ですよー」
「お気になさらないでください」
ナルの言葉に困惑している翠に双子たちは微笑みながら声をかけた。
「どうせ調査中はほとんど寝ませんから」
「基本的にあまり寝ないのでここで大丈夫ですよ」
「それより、すみません。こんな大勢で泊まりがけの調査なんて」
「いいえ、心強いです。谷山さん達は私の部屋を使ってくださいね。私は母の部屋に移りますから」
「ええー!?すみません!」
「わざわざすみません!」
「いいえ。それと広田さんには二階の和室を使ってもらってます」
そういえば……と結衣は思い出す。
いつ調査をしに行くと伝えた時に、翠は広田も泊まりにきていると話していた。
「そっか。従兄弟さん住み込み用心棒になってるんですよね」
「広田さん、今日はお仕事ですか?」
「ええ。夕方には戻ると思います」