第10章 悪夢の棲む家
その言葉に『どうして?』と聞くほど結衣も子どもではない。
何故目を閉じる様に言われたのか、直ぐに理解してから顔を真っ赤に染めた。
そして恥ずかしや緊張で体を震わせながら目を閉じる。
軽く重なる唇。
そして小さくリップ音を鳴らしながら、法生の唇が離れた。
「これで元気いっぱいになるな」
「……言い方がおじさんくさい」
「失礼な子ね。恋人とキスすると元気になるのは当たり前なんです〜。てことでもう一回」
「んっ」
再び重なる唇。
だけど次はただ重ねられただけではなく、何度も啄むようにキスをされて角度を変えられる。
「ふっ……んっ、ん」
息の仕方が忘れそう、変な声が溢れてしまうのが恥ずかしい。
結衣がそう思った時、唇がゆっくりと離れた。
「……あんますると我慢できねぇから、ここまでにしないとな」
「我慢って?」
「んー……それは結衣が成人するまで教えられねぇかもな。それか十八歳になってからか」
「なにそれ」
「むくれない、むくれない。んじゃ、次こそそろそろ行くわ。次は調査の時な」
「うん」
「おやすみ、結衣」
「おやすみなさい……」
法生はひらりと手を振ってから車を発進させた。
それを見送りながら、結衣は未だにキスされた時の感覚が残る唇に触れた。
恋人になってから何度かキスをした。
それでも未だに慣れないものだと思いながらも、顔の火照りが収まるで外にいることにした。
でなければ麻衣にからかわれる。
「慣れないなあ……」
ポツリと呟きながら、結衣は唇に触れながらまたキスされた時を思い出して顔を赤くさせる。
暫くは家の中に戻れなさそうだ。
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『……だれかはいってきた』
『大丈夫静かにしていれば見つからない』
『でも、もしあの子だったら』
Day.1
「お待ちしてました」
翠は玄関の扉を開けて、ナルと結衣と麻衣とリンを迎えた。
リンは阿川家の駐車場にいつものバンを停めてから、機材を運ぶ準備を行う。
「おじゃまします」
「おじゃしまーす」
双子は阿川家に入ろうとして、ふと視線を感じた。
何処から視線がするのだろうも思っていれば、隣の家の窓から誰かが覗いている。