第10章 悪夢の棲む家
広田が法生と会えば一悶着ありそうだな。
結衣がそんな想像をしていると、部屋を出ていこうとしたナルが双子に声をかけてきた。
「麻衣、結衣。サイズ」
「あ、はあい」
「了解でーす」
「サイズって?」
「部屋のです。機材をどういうふうに運び込むかを決めるのに必要なので」
双子はメジャーを取り出して、それぞれ計測をしようとしていれば麻衣のメジャーの端を翠が手に取った。
「手伝います」
「翠さん!?」
「とんでもない!せっかくお仕事休んだんですから、今日はゆっくりしてください」
「そうですよ!」
「何かしていたんです。このくらいはさせてください」
双子は顔を見合せてから『いいのかな』と悩む。
だがこういう時は言葉に甘えるものかなと、手伝ってもらうことにした。
正直言って手伝ってもらうのは有難い。
結衣と麻衣はそう思いながら、部屋のサイズを翠と共に計測していく。
「そういえば、このあいだは連れが失礼な物言いをしてごめんなさいね」
「失礼なのはこっちのほうですよ!ナルは礼儀と慇懃無礼の区別がつかないもんで」
「そうですよ!広田さんよりナルの方が何倍も失礼なんですから」
「ナル?所長さん?」
翠の不思議そうにしている言葉に、双子は慌てて口を塞ぐ。
ついつい依頼人の目の前で『ナル』と呼んでしまった……と少し慌てる。
「……そです。所長のコトです。──あのう、これはここだけの話ですが『ナルシストのナルちゃん』とゆー」
「まあ、その渾名ですね」
「……確かに綺麗な容姿だものね。最初に見たとき驚いちゃった」
「で、みんな次には性格の悪さに驚くんですよー」
「プライドも高くて、負けず嫌いで我が強い。きっと世の中で自分が一番頭が良くて偉いも思ってますよ」
「人を人とも思わないし、やっかましいし」
「麻衣!結衣!何をさぼっている!」
ナルの事を説明していれば、彼からの怒号が飛んでくる。
「「……ね?」」
双子の反応とナルの説明。
翠はそれでついつい笑ってしまった。
その後、双子たちはリンとナルと手伝って機材を運び込む。
四人の行動を見ていた翠は驚きで唖然としてしまう。
「こんなにたくさん機材を使うんですか?」