第10章 悪夢の棲む家
「久しぶりに、ああいう人みたなぁ」
自宅に戻った結衣はポツリと零した。
「ああいう人って?」
TVを見ていた麻衣は不思議そうにしながら姉である結衣の方へと振り返った。
「幽霊や超能力を信じない人。緑陵高校の松山思い出さない?あの人より温厚そうではあるけど、広田さん」
「ああ……はなっから信じない人って感じが似てるね。詐欺師呼ばわりも似てるかも」
「でしょ?でも緑陵高校では腹立ったけど、このアルバイト続けてたら慣れてきたよね。広田さんの言葉にもイラッと来なかったもん」
「分かる〜。慣れたよねぇ」
アルバイトを初めてそろそろ二年になりそうな二人。
心霊調査なんてアルバイトをしていれば、詐欺師呼ばわりしてくる人間もいるものだ。
最初はもちろん苛立ちもあったし怒りもあったが、2人とも既に慣れてしまった。
そういう人間もいる。
そうやって思っていれば平常心でいられるようにもなった。
「でもさあ……広田さんって本当に阿川さんの従兄弟なのかな」
「どういうこと?」
麻衣は首を傾げる。
「だって普通従兄弟を苗字で呼ぶ?」
結衣はそこが疑問だった。
翠は何度も何度も従兄弟である広田を苗字で呼んでいた。
普通従兄弟を苗字で呼ぶものだろうかと疑問に思っていた。
「そーいう人もいるんじゃない?」
「そうかなぁ」
本当に従兄弟同士なのだろうか。
なんて思っていれば結衣のスマホが着信音を響かせた。
その音に驚いて肩を跳ねさせながらも結衣は自身のスマホを見る。
滝川法生。
画面にはそう表情されていた。
「ぼーさん……」
「なになに?恋人同士の電話ですか?」
「うるさいなぁ……もう。もしもし」
ニヤける麻衣を睨みながらも結衣は電話に出た。
『夜遅くにごめんよ。まだ寝てなかったか?』
「うん、起きてたから大丈夫。どうしたの、ぼーさん」
『あー……実はさ、今お前のアパートの前に来てるんだけど……』
「え!?ちょ、ちょっとまってて。麻衣!ちょっと外出てくるね」
「気をつけてねー。あんまり長くならないよーに」
ニヤけた麻衣を無視して結衣は慌てて外に出る。
するとそこには見慣れた車が停車していて、慌てて近寄った。