第10章 悪夢の棲む家
ぼーさんこと、滝川法生と交際してから早数ヶ月。
その間に双子の妹の麻衣が、所長代理で暫くオフィスにいたまどかや安原に暴露したのだ。
ナルやリンは帰国していなかったので、知らないだろう。
なんて思っていたが、まさかまどかが暴露していたとは露知らず。
(クソ!恥ずかしいな!)
なんて思いながら結衣はスマホを操作して、着信履歴の一番上にある法生の電話番号をタップした。
本業である仕事中じゃなければいいが……と思いながら呼出音を聞く。
「ぼーさん、本業中じゃないのかなぁ」
「どうでしょう。それか本業の仕事があって遅帰りでまだ寝ていたしりて」
麻衣と安原の言葉を聞きながら、呼出音を聞いていると何コールぐらいかで電話に出た。
『もしもし。結衣、どうした?』
少し低い寝起きのような声が聞こえ結衣は思わず微笑みそうになり、慌てて表情を引き締めた。
「ぼーさん、ごめん。寝てた?」
『いやぁ、別に平気だよ。可愛い可愛い恋人からの連絡なら何時でも飛び起きます』
「ありがとう。あ、本題に入るんだけどさ……実は依頼が入ったんだよね。だからナルがぼーさんに協力してほしいらしいけど」
『こっち戻ってきて直ぐに依頼か!忙しいねぇ。俺は何時でもOKと言いたいが……本業の仕事もあるんだよな。何日に依頼人のとこ行くんだ?』
「ナル〜。ぼーさんが何日に依頼人のところに行くのかって聞いてるよ」
ナルはその言葉で考える。
何日にしようかと思い、カレンダーを見てから結衣へと視線を向ける。
「三日後。麻衣、あとで阿川さんに三日後伺うと連絡をしておいてくれ」
「はーい」
「三日後ね。ぼーさん、三日後だって」
すると電話の向こう側で『あー……』という声が聞こえる。
その声で結衣は予定が合わないのかなと苦笑いをしてしまう。
『三日後は本業が入ってる。その次の日なら行けるかもしれねぇ。予定が分かったらまた連絡するな』
「はーい。ありがとうね、ぼーさん」
『お礼言われるほどじゃねぇよ。じゃあ、またな結衣』
電話を切ってから結衣は法生の予定をナルに伝える。
そして仕事の開始日は三日後となった。