第10章 悪夢の棲む家
そんな彼らを広田は静かに睨んでいた。
怪しいものを見るような目、胡散臭い物を見るような目に近いもので睨んでいる。
(……心霊現象だの超能力だの。そんなまやかし事がこの法治国家で通話すると思うな。すました顔をしていられるのも今のうちだけだ。必ずお前の尻尾を捕まえてやる……!)
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依頼主の翠と広田が帰った後。
結衣は溜息を吐き出しながら、呑気に自分や麻衣に注文した紅茶を飲んでいるナルを見た。
「いやぁ。渋谷さん達が戻ってきてそうそうに依頼だなんて」
「忙しくなりそうだねぇ」
「でもさぁ……あの広田さんって人、全くもって幽霊だの超能力だの信用してないんだね。なのになんでココを阿川さんに紹介したんだろう」
結衣は二人が帰っていた事務所の扉を見る。
翠はあれだが、広田は完全に信用していない人間の発言と態度であった。
それはのに心霊現象を調査するこの『渋谷サイキック・リサーチ』通称『SPR』を何故紹介したのか。
色々疑問だな。
そう思いながらもう一度溜息を吐き出した。
「たしかに。誰のツテで知ったのかなあ……」
「不思議だねぇ。ね、ナル」
「別に、僕はそんなことはどうでもいい」
散々な事を言われたのにこの御仁は……と双子は呆れたような目でナルを見た。
「それよりもだ。一応ぼーさん辺りに協力を求めよう」
「ぼーさんに?」
「ああ。今のところ、騒霊現象よりも機械トラブルのような可能性はある。だが念の為にぼーさんを呼ぼう。結衣、今からでも連絡を」
「はーい」
「長電話しすぎて、電話する理由を忘れるなよ。恋人同士の電話はまた別の時にしてくれ」
結衣はスマホを取り出し、それを危うく落としそうになり慌てた。
そして顔を真っ赤に染めながら、口をまるで金魚のようにパクパクとさせている。
「な、なんでナルが知ってんのさ!?」
「まどかから聞いた」
「森さんのおしゃべり〜!!」
「いいから電話」
結衣は顔を真っ赤にさせながら、所長代理としていた森まどかを少しだけ憎んだ。