第10章 悪夢の棲む家
突然の専門用語のような言葉に広田は困惑したような表情になり、少女たちは『そうだよねぇ』と同じように困った顔になる。
「リカレント・スポンティニアス・サイコキネシス。略してRSPK戦。頻発性自発的PKっていうんです」
「PKというのはいわゆる念力の事で、超能力の一種でして。つまり霊ではなく、人の仕業だったする事が多いんです。人の無意識がやっちゃうというか」
少女たちの説明に広田は目を見張る。
心霊現象の話ではなく、突然の超能力の話になるからだ。
「ただそういう場合には必ず焦点(フォーカス)という……ええと、騒霊現象の被害が集中したりと必ず現象に関係するも人がいるものなんです」
「阿川さんのおうちの場合はそれがはっきりしないから、ポルターガイストにしてはちょっと変だなという感じです」
「心霊現象ではない可能性もあるという事か?」
「皆無ではないと思います。以前にした調査でも原因が地盤沈下だったという例がありましたし」
結衣という少女の言葉に、翠と広田は顔を見合せた。
そして翠は恐る恐ると不安げに少女たちに聞いた。
「……あの、所長さんは調査を引き付けてくれるでしょうか」
「それはなんとも……うちの所長は予断を許さない性格をしているもんで……でもできるだけお引き受けするように説得します」
「……よろしくお願いします」
そんな時だった。
扉の方から人が入ってくる知らせのドアベルが鳴り、それまで大人しくしていた青年が立ち上がる。
「あ、おかえりなさい。所長、依頼の方です」
広田はそちらへと慌てて振り向く。
そこには黒ずくめで長身の右目を長い前髪で隠した男と、同じく黒ずくめの若い少年がいた。
(あいつが……)
二人の男は広田と翠へと視線を向ける。
そして少年の方が少女達へと視線を向け、声をかけた。
「──依頼書は」
「取らせていただきました」
「それを回してくれ。後日連絡をさせていただくから」
「でも、せっかくご本人がいらっしゃるんですから」
「話ぐらい聞いたらどうでしょうか?」
「疲れてるんだ」
その言葉に麻衣という少女の頭上で鐘が鳴り、結衣という少女は引き攣った笑みを浮かべ、広田と翠へと向く。
「少々騒がしくなるんで、お耳を塞いでおくのをオススメします……」
「「はい?」」