第8章 呪いの家
コソコソと話している女性陣とそれを見守るジョン。
そして『仲がいいなんて……』と嬉しげにしている結衣を法生は面白くなさそうに見ていた。
(仲良し……ねぇ)
面白くない。
法生は舌打ちしそうになり、慌ててそれを止めてから畳の上に座って先程の『おこぶさま』について考えた。
「──えびす、か」
法生の言葉に双子が反応する。
「なあ、リンさんや。下の洞窟に機材をおけねぇか?」
「海水の心配さえなければ、置けなくはありませんが電源が……。バッテリーは二時間しかもちませんし、一つしかありません。インターバル・タイマーを使う手もありますが」
「なんじゃそりゃ」
「一定時間ごとにスイッチのオンオフをする装置です。例えば、一時間ごとに十分だけ撮影するというような。これだと最高なんとか半日はもたせられますが……」
「肝心要の所でスイッチが切れる可能性があるわけだ」
「はい。──ああ、崖の高さはどれくらいありますか?」
「十メートルちょっとです」
「それだったらなんとかここからケーブルを降ろせるでしょう。機材を運ぶ労力さて惜しまなければ」
それはつまり肉体労働をしなければいけない……そういうことである。
法生と双子は嫌そうにしながらも、致しかないと準備をすることに。
「ぼーさん。さっき言ってた『えびす』ってなに?」
「あ、それあたしも気になってた」
双子は法生と共に機材の準備をしながら、先程彼が呟いていた言葉を訊ねた。
「あん?んーそうだな……ようは漂着物のことかな」
「漂着物ってゆーと……」
「海岸に流れ着いてきた珍しいものだな。海中の石や死体、鮫や鯨……とにかく滅多に見られないものが海岸にやってくると、これを豊漁の兆しだといって喜ぶ風習があったんだ」
「死体とかを……喜ぶ風習」
結衣と麻衣は少し顔を顰めた。
死体が流れ着いて珍しいからと喜ぶなんて、そんな事があるものなんだなとなんとも言えない気分だった。
「そういう漂着物をそもそも『えびす』というらしい。とくに珍しい形の石、ありがたい形の流木。そういうものはよいことの前触れだっつーて、後生大事に祀ったりしたわけだ。『おこぶさま』とかいうあの流木もそうだろう」
「へー……」