第8章 呪いの家
まさかの発覚に双子は目を見開かせた。
「医者ってあのお金持ちで有名な医者のこと!?」
「個人で総合病院やってたからまあ金持ちだわね。なんでも家政婦さんがやってくれたしなー」
綾子が眩く見える。
結衣は住む世界が違うんだなと綾子を遠い目で見ながらも、驚きでいっぱいだった。
だが確かにお金持ちっぽいと思うところはある。
服は派手でブランド物を持っているのがよく見たことがあった。
これで納得したなと頷いた。
「それでなんで巫女なんて……」
「若旦那。中に入ってるこりゃなんだ?」
法生は祠の扉を開けていた。
中には木のような者が入っていて、結衣は法生の肩に手を起きながら祠の中を覗く。
「流木ですよ。たぶんそうだと思うんですけど、『おこぶさま』っていうんです」
「おこぶ……あの岩の?」
「土地の伝説の雄瘤様?」
「あれとは別なんじゃないかな。頭と手があってなんだか人間みたいでしょ」
彰文は右手を上にあげ、左手を下に下げる。
まるで仏像様がしているような格好であった。
「しかも、この手ってこう見えませんか?」
「あ、見えるー」
「仏様でよくそういう格好してるよね」
「そうそう。仏像によくあるポーズなんですよ。それで祀ってあるんだと思います」
彰文の案内が終了して、結衣たちはベースに戻った。
リンは相変わらず機材を見ながらパソコン作業をしていて、結衣が元気よく『ただいまーリンさん!』と声をかけた。
「お帰りなさい、結衣さんたち」
リンの言葉に結衣と法生以外の全員が目を見開かせた。
あのリンが返事をしただけではなく、結衣の事を名前で呼んでいる。
綾子は直ぐさま結衣の肩を掴んで、部屋の隅へと連れていく。
そこには麻衣や真砂子、ジョンまでいた。
「あんた、いつの間にリンと仲良くなってんの!?」
「え?仲良く見える?それなら嬉しいなぁ」
「嬉しいなって話じゃないですわ!名前まで呼ばれてるじゃありませんの!」
「あたしが呼んで欲しいって言ったから。美山邸のときも呼んでたし」
「あれはあんたと麻衣を区別付けるためにでしょ!」
「結衣、リンさんと仲良くなってるのすごい……」