第8章 呪いの家
「きゃっ!もうっ、歩きにくいわね!」
海岸のほうから彰文は階段を使って下に降りた。
道はガタガタであり確かに歩きにくいが、綾子は踵の高い靴を履いてるせいで余計に歩きにくいようだ。
「海岸のほうからも洞窟にいける道があったんですね」
「こっちは綺麗に整備されてる……」
「いまはこっちの道を使ってんですよ。あっちが危ないですからね」
しばらく歩き続けると、洞窟の入口に辿り着いた。
「少し暗いので気をつけてくださいね」
洞窟の中は夢の通り。
双子は辺りを見渡し、時折お互いの顔を見合わせた。
そして中にはやはり夢の通りの祠がそこに鎮座していた。
(夢の通りだ。いまは歪んで見えないけど……)
夢の中ではあの祠は歪んでいた。
いまは普通の祠であり、何故あの時祠は歪んだのだろうと結衣は疑問を抱いた。
「夢の通りか?結衣」
「うん。夢の通りだよ」
法生の言葉に結衣は頷く。
そして麻衣はというと、辺りを見渡している真砂子に声をかけた。
「どう?真砂子」
「同じですわ、あの山と──。アメリカで見た霊場と同じ……今も霊が流れ込んでいます」
真砂子の言葉を聴きながら、法生は祠に近付く。
そして祠をじっくりを見回した。
「これの掃除も若旦那んちでやってるわけか?」
「ええ。母屋の仏壇と店の神棚と……うちはそういうのうるさいですから。子供の頃は大変でした。子供の手伝いっていうと、そういうのの掃除なんですよね」
「わかるわかる。おれんちも寺だからさー」
双子はそう言った経験がないので、『そうなんだ』としか思わずに話を聞く。
そして結衣と麻衣は綾子へと視線を向けた。
「綾子の家も神社でしょ?たいへんだった?」
「彰文さんやぼーさんみたいに、掃除させられてた?」
「残念でした。アタシのうちは別に神社じゃないもーん」
「「違うの!?」」
巫女だからてっきり綾子の家は神社なのだと、双子は勝手に思っていた。
「アタシ手伝いなんてした事ないのよねぇ。ホラ、お嬢育ちでそのうえ一人っ子ね甘やかされてきたからー」
「自分で言うこと?」
「じゃ、綾子んちってなにしてんの?」
「医者よ」
「「ええ!?」」