第8章 呪いの家
「リン」
あとから来たナルが一言そう呼ぶ。
するとリンさんはゆっくりと栄次郎さんへと近付いていく。
そして栄次郎さんは羽交い締めされていたのを振り解き、リンさんへと突っ込んでいった。
「リンさん!」
「危ない!」
リンさんは軽やかに栄次郎さんを避けた。
そしてあっという間に彼の背後にまわると首を腕で締めてから、気絶させてしまったのだ。
本当にあっという間の光景に、唖然としてしまう。
慣れているというかなんというか……冷静すぎてこちらが驚いてしまう。
「いったい、なにがあったんですか?」
あの後、気絶した栄次郎さんはリンさんにより拘束。
そして光可さん達は怪我をしていたので、綾子たちと手分けして手当をした。
「こっちこそ知りたいわ。話をしていたらいきなりなんですからね」
「いきなり暴れだしたんですか?」
「ええ……そりゃあ、ちょっと言い争いはしましたけど」
「内容をお聞きしても?」
ナルの言葉に光可さんは言いにくそうにしていた。
だがポツリポツリと事の経緯を話してくれた。
「──今日、食事のときに不機嫌だったので理由を聞いただけです。そうしたら……」
『べつになんでもない』
『なんでもないならあんな顔しないでよ。お客様の前でみっともない。ちょっとどこ行くの。まだ、話は終わってないのよ』
「そのあと直ぐに戻ってきたと思ったら包丁を持ってて……まったく、どうかしてるわ!」
そして暴れてこの有様。
あたしは部屋をぐるりと見渡してから、包丁で傷つけられたであろう机を見た。
「不機嫌だったことの原因に心当たりは?」
「さあ……食事の前までは普通だったんです。一通り料理の用意が終わってから外の空気を吸ってくるって出ていって──戻った時にはああだったんです」
「憑依霊かね」
「だろうな。ジョンを呼んだほうがよさそうだ」
ジョンは憑依霊を祓うのが得意。
だからナルはそこをかなり頼りにしているところがある。
「それとも──松崎さん。落とせますか?」
「アタシ?……できなくはないけど、あんまり得意じゃないのよねー」
「ぼーさんは?」
「やってみてもいいけどな。誰でも初体験てモンはあるしよ」