第8章 呪いの家
「そうですね……陽子義姉さんかな──いえ、うちで一番様子が変わったと言ったら子供たちです」
「葉月ちゃんが?」
そういえば、ここに来てから葉月ちゃんに会っていない。
でも子供たちと言うならば、あと一人か二人はいそうな言い方である。
「いえ、葉月の他にあと二人いるんですが、和兄さんの子が克己と葉月。光可姉さんの子が和歌子──この克己と和歌子が妙なんです」
「妙……って」
「どんな風に?」
「なんと言ったらいいのか……以前はそうでもなかったのに、最近ベッタリくっついて離れないんです。おまけに二人で終始コソコソ内緒話をして。何を話してるのか聞くと二人で目配せして逃げていくし──」
「それはいつからですか?」
「やはり祖父の葬儀の前後からです。それで陽子義姉さんがこの間まですごく心配してたんですけど、ここ二、三日急に気にしてる様子がなくなって……」
全員がお祖父さんの葬儀の後から様子が変。
その事に眉を寄せていれば、ナルは無表情でだが真剣そうな眼差しで『なるほど……』と呟いた。
その後、あたしと麻衣はそれぞれの部屋にカメラを設置しに行っていた。
ヘッドフォン型マイクでナルに指示を貰って微調整していく。
「カメラこの角度でいい?」
「いいだろう。戻ってこい」
二人で『ヤレヤレ』と呟きながら部屋を出る。
そこで廊下が真っ暗になっていることに気が付いた。
「ありゃ、真っ暗だ」
「いつの間に廊下の電気消されたのかな……真っ暗」
「まあ……いっか。ベースすぐそこだし」
「だねえ。非常灯もついてるから大丈夫かな」
なんて言いながらも正直言うと怖い。
幽霊が出る料亭の部屋に、真っ暗な廊下。
二人で寄り添いながら歩いている時、どこからか誰かに呼ばれたような声が聞こえた。
「え?」
「──アレ?」
「いま、誰かに呼ばれたよね?」
「うん……呼ばれたと思うんだけど……」
気の所為なのだろうか。
そう思って麻衣と歩き出したら、また声が聞こえてきた。
そして二人揃って振り返ってから身体が固まった。
柱の隅から誰かが手招きしている。
まさかの幽霊が出たのかと緊張した時である。
「……おねえさんたち……」
柱の影から、二人のパジャマ姿の男女の子供たちが出てきた。