第8章 呪いの家
彰文さんはポットなどを持ってきてくれていて、有難い気持ちで彼を招き入れた。
彼はテキパキとあたし達にお茶を淹れてくれて、あまりお茶を淹れてもらう立場じゃないからソワソワとしてしまう。
「どうぞ」
「ありがとうございます〜!」
「ありがとうございますー♡たまにはお茶をいれてもらう立場になるのもいいなあ♡」
「ちょっと慣れないけどね!」
暖かいお茶をチビりの飲む。
美味しいお茶にほんわかしていると、彰文さんがにこやかに聞いてきた。
「料理はお口に合いましたか?」
「それはもう!って言っても、ああいう料理初めてだったから緊張しちゃって」
「あたしもキンチョーの方が勝っちゃってたり」
食事はとても美味しかった。
だけど味わう所か、緊張してしまってあまり味が分からなかったというか。
「それにしても、こういうお家の人はご飯食べる時と静かですよねえ」
「そういえば、お兄さん達……和泰さん達はあまり喋られてなかったですよね」
お姉さん達の奈央さん達はお喋りをよくしていた。
だけどお兄さん達の、和泰さん達は何処と無く不機嫌そうというか静かだった。
「すみません……いつもは兄たちだけでも、もっと賑やかなんですけど。どうも最近は暗くて──」
「仕方ないですよ。心配事があるんですもん。栄次郎さん……かな。機嫌悪そうでしたもんね」
「そうですね。どうしたんでしょうか急に……」
彰文さんの言葉に瞬きを繰り返した。
「急に……なんですか?」
「突然不機嫌になったわけですか?」
「ええ。和兄さんも栄次郎義兄さんも店を手伝っているので、元々人当たりはいいんです。客商売は人当たりが肝心ですから。栄次郎義兄さんのあんな不機嫌な顔、初めて見ました」
「……つまり、栄次郎さんは元々人前で不機嫌な顔をするような人ではないわけですね?和泰さんはどうです?」
ナルは真剣な眼差しで尋ねた。
「和兄さんもこの二、三日ピリピリしていて……靖兄さんもそうです。靖兄さんも元々すごく明るい人間なんです。明るすぎて父母から窘められるぐらいで」
「靖高さんの様子が変わったのはいつからですか?」
「……祖父の葬儀の日からだと思います。理由を聞いても言わないし」
「他に様子が変わった人はいますか?」