第7章 血ぬられた迷宮
ナルは本気で壁を壊すかもしれない。
なんて思っていると、窓をノックされる音が聞こえてそちらへと視線を向けた。
窓には二人の人影。
窓を開けてみると、そこには森さんと安原さんの姿があった。
「こんばんはー♡」
「まいどー。情報をお届けにきましたー」
早速来た。
なんて思いながらも、二人を部屋の中へとリンさんが手を貸してから入れた。
「安原くん凄いのよー。大活躍だったのよね、今日」
「そーです。ぼく有能ですから」
「何のためにここを出ていったんです」
「ですよね、すみません。じゃ、さっそく報告させてもらいますね」
さらりと謝罪した安原さんは言葉を続けた。
どうやら安原さんもナルには強いらしいと思えた瞬間だ。
「実はですね、ちょっと引っ掛かってたんで市内に戻る時にこの家の煙突の数を数えてみたんですよ。結果は十二本だったんですけど──邸内を調べてた時の感じでは十本か十一本だったと思うんです」
「十一本ですね」
「……一本多い」
「でしょ。で、よく見ると家の中央部分にある煙突が変なんですよ。形が丸くて他のより太いんです」
「そこで!賢いわたしはちゃーんと証拠写真を撮ってあります」
森さんが何枚かの写真を撮り出す。
すると、そこには屋敷の中央部分に煙突が伸びていて、安原さんの言う通り丸くて太いものだ。
「ね、ほらこれ」
「また中央部分部分かよ。やっぱ、なにかあるな……」
何かという言葉に嫌な事を思い出す。
あたしと麻衣が夢の中で見た、タイル張りの手術台などが置かれていた部屋。
もしかしたら、あれがあるんじゃないか。
なんて思いながら、震える腕を抑えた。
「それから、美山家の本邸にいってみました」
「げ。見つかったらどーすんだ」
「安原さんが思いっきりがすごいねぇ……」
「っていうか、ご近所の家を訪ねて色々と話を聞いてみたんです。できるだけお年寄りの方を捜しましてね」
『──はあ、美山鉦幸さんですか……。わたしの父から聞いた話ですけどねぇ、鉦幸ちゅう人は人嫌いな上にえらい変人だったそうですよ。優しい時はね人に物をやったりするのに、機嫌が悪いと人を追いかけ回して殴ったりねぇ』