第7章 血ぬられた迷宮
日没後、あたし達はベースに集まっていた。
リンさんが設計した図面を見ながら、家の中に空白がある事を説明される。
「この家は中央部分が高い構造になってます。一階の床が中央に向かってごくわずかですが傾斜しています。そのため外辺部に比べて中央付近な二メートル以上高くなっているんです」
「……ヘンなの」
「この家、そもそもはどういう形をしてましたのやろな」
「……窓の配置から考えて、中央部の小さな建物に部屋をつけていって外側に向けて大きくしていったらしい。──という所まではわかるんだが……」
「やっぱ、この真ん中の空白が分かんねぇよなあ」
あたし達はリンさんに手渡された図面を見る。
建物の真ん中にある空白部分に何があるのか、未だにわかっていない。
調べようがないのである。
「中庭って訳でもなさそうなのに、二階まで吹き抜けってのはおかしくないか?でかい隠し部屋があるにしても、そこに行くための抜け道だってどこにあんのか……」
「──もともと、抜け道なんてなかったとしたら?」
「へ」
「あの空白は隠し部屋などではなく、閉ざされた部屋なのだとしたら?抜け道は探し尽くした。これだけ古い汚れた家だ。そんなものがあって失踪した連中が使ったなら、ホコリの乱れや足跡があって当然だろう?ところが、そんな形跡はなかった」
言われてみればそうだ。
あたし達が探している間、埃が消えている場所や足跡なんてなかったのだ。
「じゃあ、ほんとに閉ざされた部屋ってこと……?」
「そう考えた方が妥当だろうな。建物が中から外へ向けて建てられてることといい、何か目的があって──たとえば、中にある何かを隠そうとして増築をしていったとしか思えないんだが」
「……ありうるわね」
「しかし隠すたってなにを──!……まさか、あれか?結衣と麻衣が夢で見たっていう部屋……」
ぼーさんの言葉に、あたし達は顔を見合わせる。
夢の中で見た部屋は探していても何処にもなくて、見覚えのない部屋だった。
その部屋がもし閉ざされている部屋だったとしたら……。
「どうだろうな。本当にそんなものがあるかどうか……壁の向こうを調べてみればわかるんだが」
「つーたって、どーやって調べんのよ。壁ブチ壊す訳にもいかねーべ?」
「その案は悪くないな」
「まじで!?」