第7章 血ぬられた迷宮
教授という言葉に瞬きを数回する。
一体教授とは誰のことを言っているのだろうか。
「少しはご両親の気持ちも考えてあげなさい」
「リン」
「貴方は自分が十七の子供だと言うことを忘れていませんか」
リンさんの言葉に、ナルが徐々に不機嫌そうにしているのが見てわかる。
あからさまに機嫌が悪いという表情を浮かべていて、言葉も少し苛立ちが見えている気がした。
「──ぼくに不満があるんだったら帰ってもらってもいいんだが」
「何か勘違いしていませんか。むろん、わたしは帰ってもいいのですよ。忘れていただいては困ります。わたしは貴方の付き添いではありません。貴方を監視するためにいるのですからね」
リンさんの言葉に全員が驚愕した。
まさかのナルを『監視』しているという言葉に目を見開かせてしまう。
監視というのはどういう事なのだろうか。
何故監視されているのだろうかと、色んな考えが脳内をグルグルと回っている時だった。
「ぼくが外れます」
安原さんが挙手したのである。
「安原さん……!」
「おい、少年」
「そうすれば問題はないはずです。所長が調査員にあとを任せてリタイアしても支障はないでしょう?ぼくは諏訪市内で森さんをアシストします」
そうして、安原さんはリタイアという形で美山邸を離れる事になった。
あたしと麻衣とぼーさんで、安原さんをお見送している時に後ろにいつの間にか井村さんがいた。
「結局逃げ出したか。無責任は所長だな。しょせん、子供の遊びか」
理由も知らないのになんで、そんなことを言われなければならないのかと怒りを覚えて麻衣と同時に振り向く。
するとそれを止めるかのようにぼーさんが、あたし達の頭に手を置いた。
「言わせとけよ。とにかく福田さんを捜しにいこう」
「……今度はデイヴィス博士もなにかしてくれるかな」
南さんの話によると、福田さんは『少し歩いていくる』とだけ言ってベースを出てから帰ってこなかったらしい。
『その頃でしたら、わたしは玄関を掃除していましたがお見かけしておりません』
職員の一人がそう証言している。
つまり窓から出ない限りは、邸内にいることになる。
あたしは真砂子と綾子と共に、麻衣はぼーさんとジョンと共に邸内を歩き回って捜した。
だけど彼女を見つけることは出来なかった。