第7章 血ぬられた迷宮
「わかりました。では松崎さんと原さんは絶対に離れないように。お互いにフォローできますね?」
「……松崎さんでは不安ですわ」
「ちょっと!」
また言い争いが起きそう。
そう思っていると、ナルが静かに真砂子の苗字を呼んだ。
「原さん。ぼくは基本的にこのメンバー以外を信用できない。アテにできる人間は少ないんです。あなたも霊能者のはしくれなら自分の身ぐらい守れますね」
「……ええ」
「安原さんはまったく自分の防衛ができない。護衛には十分に信頼出来る人間が必要なんです」
「……はい……」
「では、ぼーさんとジョン。二人は安原さんを護衛してくれ」
そこでふと思った。
あたしと麻衣はもしかしてリンさんが守るということなのだろうか。
それならばナルは誰がと悩んだ時、リンさんが椅子から勢いよく立ち上がった。
「まってください。それは谷山さん達をわたしが護衛するということですか?」
「そうだが」
「では、貴方は誰が護衛するんです。貴方は退魔法を使えないはずです。違いますか?」
「そ、そうだよ。どうすんの!?」
ナルは霊能者じゃない。
彼はたんなる超心理学研究者であって、リンさんの言う通り退魔法なんて使えないのだ。
護衛が足りない。
そう思っていると、ナルはただ無表情に目を閉ざすだけだった。
「なんとかなる」
「冗談じゃない。なんとかされては困ります。ナルの護衛はわたしがします。滝川さんは安原さんを。ブラウンさんは麻衣さんを。原さんか松崎さんが結衣さんをおねがいします」
「ぼーさん一人ではきつい。それに原さんか松崎さんでもキツイ」
「おいおいナルちゃん」
「ちょっと、アタシ達じゃキツイってなによ。アタシと真砂子なら結衣の一人ぐらい守れるわよ」
「見損なって言ってるんじゃない。ここはそれだけ危険である可能性なあると言ってるんだ」
ナルはやはり神経質になっているみたいだ。
確かにここはそれだけ危険だというのはあたしにも分かるが、ナル一人でと危険なはず。
「では、誰か一人を返してください。それに松崎さんと原さん二人なら結衣さんは守れるはずです。ナルを一人にすることはできません。貴方に万が一のことがあったら教授になんていってお詫びすればいいのですか?」