第6章 禁じられた遊び
馬鹿じゃないのかと麻衣と二人で叫びそうになり、後ろからぼーさんに口を塞がれる。
「何を企んだってムダだ。とにかく出ていけ……」
何も知らない松山は相変わらずの上から目線であるが、ナルはそれを無視してヲリキリさまの紙を彼に見せた。
「……なんだ、それは」
「呪符です」
「呪符だあ?」
「先生は校内でコックリさんが流行していたことをご存知ですか」
「ああ」
「これはその、コックリさんに使われていたもので、誰かがこれを新式のコックリさんと偽って広めたと思われます」
「ほう、それで?」
「これは呪符の中でも呪殺に用いられるものです」
ナルの言葉に松山は嘲笑う。
馬鹿に出来ているのは、この呪符が誰を呪殺するため使われていたのか知らないからだ。
「バカバカしい!呪いなんかで人が殺せるわけないだろうが。だいたい誰を呪い殺すっていうんだ?」
「……松山先生をです。そうだな、リン」
「はい」
「理由は?」
ナルがリンさんにヲリキリさまの紙を差し出し、それを彼が受け取ってからリンさんはぼーさんへと視線を向けた。
「滝川さん、梵字は読めますか?」
「ん、まあいちおう」
「この左側の部分を見てください。ここには呪う相手の名前を書きます」
リンさんが指さしたのは、人のイラストの横のぐにゃぐにゃした文字である。
あたしにはなんて書いているか分からないが、おそらくこれは先程リンさんが言っていた『梵字』なのだろう。
「……なるほど。松山秀晴としか読めねぇや」
「なっ」
ぼーさんの言葉に、松山の顔色が変わる。
「別に梵字である必要はないのです。現にこの左側の方に年齢を書くのですが───ナル、読めますか」
「……ぼくは漢字が苦手なんだが」
「『當歳伍拾参』……つまり今年五十三歳という意味です」
「確かに、そのくらいのお年のようだ」
確かに松山は五十三歳ぐらいの年齢に見える。
この年齢と梵字という文字の名前で、これは松山を呪殺する為のものだと更に分かってしまった。
「このように漢字で書いてもよかったのです。むしろその方が正式ですし。しかし───……マツヤマと明記してあれば誰もが怪しむ」
「それでわざわざ梵字を使ったわけか……」
「だ、だれがこんな……」