第6章 禁じられた遊び
受け取ったリンさんは無表情でヲリキリさまの紙を見下ろす。
「やはり……」
「なに?なんなの?」
「何か分かったの?」
「狂わすにな四つ辻……殺すには宮の下───これは呪符です。それも神社の下に埋めてあるからには、人を呪い殺すためのもの」
体温が一気に奪われたような気がした。
ヲリキリさまは人を殺すためのもの……そんなこと、誰も思いつきもしなかったのだから。
「……呪符?」
ナルが会議室に戻ってきてから、リンさんが彼に呪符についての説明をした。
「はい。これは十字路に埋めれば人を狂わせ───神社の下に埋めれば殺すことができます。誰かがこの呪符をコックリさんの道具と偽って広めた……なにも知らない生徒たちは進んで呪殺に手を貸していたんです」
リンさんの言葉に安原さんの顔色が変わる。
安原さんもヲリキリさまをしていた……つまり彼も知らず知らずに呪殺に手を貸していたことになるのだ。
「作ったのも呪法を行ったのも素人だからよかった。わたしならこれ一枚で殺してみせますよ」
リンさんの言葉に背筋が凍る。
「……すると───生徒たちはそれとは知らず、毎日のように呪符を作って呪殺の儀式を行い、たまたまこれが降霊術の道具として使われたために霊が集まり結果───蠱毒の様相をていしてしまった……」
「そういうことだと思います」
「蠱毒が完成したらどうなる」
「この人物は死にます」
「この人物……とは?」
「マツヤマ ヒデハル氏です」
会議室に静寂が満ちる。
マツヤマヒデハルと言うならば、この学校でその名前の人物が浮かび上がるのはあの松山だ。
「……まつやま……って、あの松山先生のこと?」
「なんで……松山先生が……」
あたしの言葉を遮るように会議室の扉が開いた。
誰が入ってきたのかと思えば、あたしは目を見開かせてしまう。
「帰る準備は済んだか?」
入ってきたのは松山だった。
まさかの本人の登場に、誰もが無言で彼を見ている。
「もう用はないんだ。さっさと引き上げるんだな」
「申し訳ありませんが、席を外していただけますか」
「ふん。またよからぬ相談か」
「先生はお聞きにならないほうがいいと思います」
「なんだと?料金をつり上げる算段でもしてるのか?」