第6章 禁じられた遊び
「地域や地方でやり方が違ったりするじゃない」
「うん。でも紙もちょっとへんなの。ね、結衣」
「そーだね、変わってたよ。五十音と数字があって『はい』『いいえ』までは普通のコックリさんと変わらないの。でも、コックリさんだと真ん中に鳥居を描くじゃん?あれがなかったんだよ」
「ヲリキリさまはその代わりにうにうにした模様を描くわけ。でもって『鬼』って字でぐるーっとまわりをかこって……」
麻衣が言い終える前に、強い物音が聞こえた。
その音の先へと視線を向けると、リンさんが驚いた様子で椅子から立ち上がっている。
珍しい。
そう思っていると、リンさんは目を見開いたままあたし達を見ている。
「鬼……?」
「リンさん?」
「リンさん、どうし……」
「どんな模様でしたか?」
「ど、どんなって……あっ、安原さん覚えてませんか」
「安原さんなら覚えてない?」
あたしと麻衣は思わず安原さんに助けを求める。
二人揃って恐らく曖昧にしか覚えていない。
「ぼくも一度やっただけだからなぁ……」
「ヲリキリさまと言っていましたね。それは呪文から来ているのではありませんか?『をん をりきりていめいりてい めいわやましれいそわか』───」
「それです!」
「そして使い終わった紙はどこかへ埋めるとか」
「そうです。一回しか使えないって、使ったら神社に埋めなきゃいけないとかで」
「神社……」
神社という言葉であたしと麻衣は顔を見合わせる。
夢の中で出てきた神社……小さな鳥居にお稲荷さんがあった。
「……あの……もしかして近くにあまり大きくない神社がないですか?」
「小さな鳥居と陶製のお稲荷さんがある……」
「知ってるんですか?」
やっぱりと確信した。
あの夢の中でみた神社はこれに関係していたのだと。
「その紙、手に入りませんか?」
「そうですねぇ……ちょっと待っててください。その辺の生徒に聞いてきます」
安原さんはそう言うと会議室を出ていき、リンさんはそれを見送った。
珍しくリンさんがよく喋ったと思いながらも、なにがあるんだろうとあたしは首を傾げる。
暫くして、安原さんが戻ってきた。
その手にはあのヲリキリさまの紙が握られている。
「ありましたよ。これです」