第6章 禁じられた遊び
松山の表情は真っ青だった。
誰でもそうなる……自分が呪殺されそうになっていたと知れば。
「……ヲリキリさまが流行り始めたのは美術部と一年生の間からだそうです。そしてこの呪法は誰もが簡単に知ることの出るものじゃない。よほどこういう事に興味ある人物でないと───」
「さ、坂内か!?あ、あの馬鹿、なんてことをしてくれたんだ!なんでおれが……」
この人はわからないのだ。
なんで坂内くんが、自分を呪い殺そうとしたかなんて。
あの日あんな事を言った彼には分かりやしないだろう。
「なぜ自分が選ばれたのは本当にわからないんですか?」
松山の言葉を遮るように言ったのは安原さんだった。
「……安原……」
安原さんは今まで見たことのないぐらいに、眉を寄せて鋭い目付きで松山を見ていた。
「『ぼくは犬ではない』坂内くんの遺書の全文です。ぼくらは学校がぼくらを犬のように飼い慣らそうとしてると知っていました。その代表がだれかと聞かれたらぼくでも先生をあげます。先生は学校の象徴だったんだす」
『───坂内、おまえまたこんな本を持ち込んで!こういう浮ついたことにうつつを抜かしてたらロクなにんげんにならんぞ!こんなくだらんモノを読む暇に教科書の一つでも読め!』
胸が苦しくなる。
締め付けられるような、辛さが込み上げてきて目頭が熱くなった。
「……今更犯人が分かったところで意味はありません。もう呪法は動き出している……呪者だろうと止められません」
「ど、どうにかならんのか!?」
「解決策は?」
「ありません」
「呪詛を返すことはできるだろ?」
「できますが……返してもいいのですか?」
リンさんの無表情の問に、ナルは何か考え込むような表情をしていた。
「……やむを得ないだろう。死んだからといって心が痛む相手じゃないが……死ぬとわかっていて見殺しにはできない。───呪詛は返す」
「呪詛を返す……?」
「それって、どいうことなの?」
「呪詛を呪った本人に返す、ということだ。残った霊同士が食いあってもう間もなく蠱毒は完成する。そうなれば松山を待っているのは死だけだ。それもおそらく残虐な。そうなるまえに……」
「は、はは」
ナルの言葉の途中で、松山の笑い声が聞こた。