第6章 禁じられた遊び
「それで、これを呪殺にも利用した。蟲法を行って虫を多少の金銀と共に憎い相手に送り付ける。相手は意味が分からず虫を養うことを怠り……食い殺されてしまう……」
背筋が凍るというものじゃない。
息が詰まるようなそんな恐ろしさがあり、息が上手く出来ないような感じがした。
「───ま……待ってよ!閉じ込めて共食いって……今学校で起こってることと同じじゃない!」
「だから蠱毒だと言ってるだろう」
「虫のかわりに霊同士が食い合ってるってことか……」
「……このまま、共食いし合って一番強い霊が残ったら、どうなるの……?」
「そうだよ……どうなるの?」
「わからない。もし誰かが意図的にやっている事だとしたら、残った虫は呪詛の道具として使われる。だが偶然に───たまたま学校が霊的に閉ざされた場所だった為に起こったことだったとしたら、何が起こるかわからない」
「……なあ、最強の霊が残ったら、それがとりついた学校は食わせてやらなきゃならないんじゃないのか?その……定期的に人間一人を」
「ちょっと!」
「ぼーさん!?」
「現実問題だろ。それでなきゃ主人が食われる。この場合……主人は誰だ?」
「誰って……」
「霊を呼んだ生徒全部だろうな」
冷や汗が浮かんだ。
ナルの淡々とした口調で告げられた言葉に、息を思わず飲んでしまった。
ナルは定期的に人間を一人与えなければ、主人が食い殺されると言っていた。
じゃあ霊を呼び出した全員が主人となるならば……人間を与えなかった主人たちが食い殺されることになる。
「それじゃ……生徒たちが……」
「……だ、だめ、そんなの!なんとかできないの?だって皆そんな物だって知らなかったんでしょ!?なのに食われるって……安原さんだっているんだよ!ねえ、ナル!」
「……ぼくにはできない」
キッパリと告げられた言葉に絶望に近いものを感じた。
「でも……」
ナルが一人の元に視線を送る。
その視線を全員が辿り、その先にはリンさんがいた。
「リン───?」
「どうだ?」
リンさんは少し考える素振りを見せる。
そしてゆったりとした動きでヘッドフォンを外した。